【I Love NY】1.祝!ニューヨーク州同性婚合法化

(ここではSTEPのNYスタッフから届く、現地の最新音楽情報の一部をご紹介しています!)

1.祝!ニューヨーク州同性婚合法化

7月24日はニューヨークの、そしてアメリカの記念すべき日となりました。長い年月に渡って懸案事項となっていた同性婚を認める法案が一ヶ月前の6月24日に合法となりましたが、それが遂に7月24日に施行されて婚姻届の受理と挙式が次々と始まったのです(24日初日は800組以上のカップルが挙式をあげたそうです!)。
婚姻という人並みの権利をようやく手に入れることができたゲイの人達の喜びは言葉では言い表せないと思います。

予言者めいたことを言うつもりはありませんが、私は前々から“21世紀はイスラムとゲイの時代になる”と感じていました。言い換えれば、西洋(特にアメリカ)が、いかにイスラムとゲイを受け入れることができるかということで、もしも受け入れることができなければ、特にアメリカには未来は無いとさえ思っていました。
それを確信したのが2001年9月11日のテロであり、また、ここ数年激しさを増しているイスラムとゲイに対する差別やバッシング、そしてヘイト・クライム(殺人も含む)でした。


実は9.11のテロの直後、私はある日本のテレビ局からインタビューを受けて短いコ
メントを求められたのですが、その時も「これは終わりではなく始まりであり、西洋にとって21世紀はイスラム(との共存)の時代になる」と言ったことを覚えています。

さて、同性婚を始めとするゲイの権利については、特に最近アメリカの音楽界も活発に動いていました。その急先鋒はもちろんレディ・ガガです。
彼女は3月11日の大震災の直後から日本支援のために活発に動いており、先日はニューヨークのフリーペーパーに震災被害の正確な理解を促し(アメリカ人の大半は、日本全土が地震と津波で崩壊し、放射能汚染されていると思っています)、東京・京都・大阪などへの観光旅行は全く問題無く安全であると説明する“みんなで日本を旅行しよう”キャンペーンの投稿も行っていました。
ガガは、“生まれながらにして持っている個人の尊厳の尊重”(これは「ボーン・ディス・ウェイ」の歌詞で歌われています)と、あらゆる差別の撤廃を常にテーマに据えているわけですが、そんな彼女のここ数年のファースト・プライオリティは、“反”ゲイ差別と言えます。恐らく彼女は、音楽史上最もゲイから支持されているアーティストと言えますし、今回の同性婚法案通過の影の立役者でもあり、ストレート(異性愛者)な人達のゲイ・アレルギーを緩和する役目も充分に果たしていると言えます。

古今東西ジャンルを問わず、音楽界または音楽アーティストの“ゲイ率”は非常に高いと言えます。これは音楽に限らず、ダンス、演劇、美術といったアート全般に言えることです。アートはそもそも母性に属す部分が多く、究極的には性別を超えたものですし、性別を誇張しすぎると、アートの根幹を成す“Eros(愛)”も“エロ(性愛)”に転化することになってしまいます。ですから、アーティストにゲイやバイ、中性的・無性的な人が多いのは当然のように思えます。
しかし、それが世間・社会の表舞台に出てくると、宗教が作り上げた神や人間のイメージ、そしてドグマや倫理といった産物が大きな障害となって中々容易ではありません。
例えばエルトン・ジョンやルー・リード、クイーンの故フレディ・マーキュリー、カルチャー・クラブのボーイ・ジョージ、グリーン・デイのビリー・ジョー・アームストロングなどはゲイ(またはバイ)であることを躊躇無く誇らしげな態度でアピールしてきましたが、彼等は当初からキワモノ的な扱いを受けていたので、世間のリアクションも“ショッキング”というレベルには至りませんでした。
しかし、万人受けするイメージ(特に女性ファンの多いアイドル的男性スター)で作り上げられたアイコン的なポップ・スターとなると、カミングアウトするのは極めて難しくなってきます。
例えばジョージ・マイケルやリッキー・マーチンなどは、ゲイであることをカミン
グアウトすることにとても悩んだようです。つまりそれは、ファンを裏切る、ファンを失う、という恐れがつきまとうからです。でも、この二人は最終的にはこの問題をうまく切り抜けたほうだと思います。何故なら音楽界にはカミングアウトすることもできず、自分を偽って苦しんでいるアーティストや業界人がまだまだ山ほどいるからです。
不世出の偉大なシンガーであった、故ルーサー・ヴァンドロスは、そうした悲劇の一例であるとも言えます。彼は生涯ゲイであるとは公言しませんでしたが、多くの関係者が彼がゲイであったことを証言しています。ルーサーは“歌声を聴いただけで妊娠する”などという下世話なジョークが言われていたほど、そのセクシーな歌声が女性ファンを魅了し、歌詞の内容から“バッドボーイ”(悪党ではなく、チョイ悪のプレイボーイといったところでしょうか)のイメージも作り上げられていましたが、実際の彼はそうしたイメージと現実とのギャップに常に思い悩み、苦しんでいたそうです。

ゲイ差別に関しては、黒人とヒスパニックの保守性は極めて顕著です。特にバプティスト系クリスチャンの黒人とカソリックのヒスパニックのゲイ嫌悪は異常なほどです。
実際に毎週ゴスペル教会で演奏している私も、教会内では自分がゲイ・サポーターであることは口が裂けても言えません。何故なら、もしも公言したとしたら、それは治安の悪い危険エリア故の危険ではなく、自分の身の危険にまで及びかねないからです。

最近では、メリッサ・エスリッジやk.d.ラングのように堂々と爽やかにゲイであることをアピールしているアーティストも増えています(もちろん彼女達もカミングアウトすることには思い悩んだそうですが)。メリッサは癌も克服し、k.d.はゲイやエイズ、菜食主義に関する社会活動にも熱心で、本当に尊敬すべき力強い女性達ですが、多くの人にとってそれは簡単なことではありません。やはりマイノリティの勇気は法によって守る必要もあると思いますし、その意味でも今回のニューヨーク州の同性婚合法はエポックメイキングな出来事であると言えますし、アメリカの音楽界に与える影響も極めて大きいと思います。

ゲイは一般的にはまだ“差別から理解へ”という対象と言えますし、第三(更には第四、第五〜)のジェンダーとして社会の中で自然に受けいられるようになるにはもう少し時間も掛かると思います。しかしそれが進んでいけば、音楽や様々なアート/カルチャーにおいて新しいムーブメントが次々と生まれていくはずです。それがガガの仕掛けている“意識革命”でもあると思いますし、彼女のフォロワー達が次々と生まれてくるのも時間の問題であり、それはとても楽しみなところでもあります。

正直言って、個人的にはガガの音楽にはほとんど興味はないのですが、彼女は21世紀のボブ・ディランやマイケル・ジャクソンとも呼べる先進性とリーダーシップを兼ね備えた類い希なアーティストであると私は確信しています。

レディ・ガガ「ボーン・ディス・ウェイ」より抜粋

私は私なりに美しい
何故なら神様はミスを犯さないから

私は正しい道を歩いている
私はこの道のもとに生まれてきた
後悔して隠れないで
ただ自分を愛すれば大丈夫

ゲイでも、ストレートでも、バイでも、
レズビアンでも、トランスジェンダーでも、
黒人でも、白人でも、インド人(ヒンドゥー)でも、
レバノン人(イスラム)でも、東洋人(仏教)でも、
障害のせいで仲間はずれにされても、
いじめられても、からかわれても
喜んで自分を愛してあげよう

私は正しい道を歩いている
生き抜くために、勇敢に生きるために私は生まれてきた

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