【STEP INFO】谷町スタジオリニュアル
10月に入り涼しくなり過ごしやすい気候になりましたがいかがお過ごしでしょうか?
気候といえばいいニュースが入ってきましたね。
気候開発モデルの開発で、2021年のノーベル物理賞をアメリカ・プリンストン大学
上席研究員の真鍋淑郎(まなべしゅくろう)さんが受賞されました。おめでとうございます。
「60年以上続けてきた研究が楽しくて仕方がなかった」とコメントにすごいなと感動しました。
私たちも日々、スタジオ環境等を良くするため研究をしていまして
このたび、弊社の谷町スタジオをリニュアルいたしました。(今年8月で5年目を迎えました)
MAスタジオの機材更新に伴い、コンソールデスクもリニュアル。
ディレクター席も広くなり、今まで以上の「良い音」、「良い環境」をご用意しています。
作業で来られた作曲家さんにも「こんな綺麗な低音が出ているスタジオなかなかないですよ」
とお褒めのお言葉も頂きました。
そして何度かご紹介させていただいています弊社の遠隔編集・MAプレビューシステム
『コッチ(Cocci)』ですが、こちらもマイクやスピーカーの増設により
スタジオ・リモート先の音声クオリティーが格段に向上しストレスのない
コミュニケーションでさらに快適な作業が可能になっていますので
是非担当スタッフまでお気軽にお問い合わせください。
それでは、10月号 メルマガスタートです。
(enoki)
【MUSIC】DSPS&The Volunteers&片山凉太
メディアコミュニケーション部 池田です。
秋になりました!! みなさんは何の秋をイメージしますか?
わたしは、秋といえば「サツマイモ」。
おすすめの食べ方は、「焼きいも」にして、冷やして食べる。
できたてホカホカの焼きいもは、GI値が白米よりも高くなるそうで・・・
そこで、太らないためには、冷やしてから食べる事がポイントだそう。
冷やすことでGI値が下がり、「レジスタントスターチ」という成分が増えるとか。
(レジスタントスターチは、食物繊維と似た働きをするのが特徴らしいです)
ちなみに「焼きいも」は日本のほかに、
韓国、中国、台湾の4カ国にしかない東アジア特有の文化だそう。
今回はそんな、「焼きいも文化」が根づいた
東アジアのアーティストについて書かせていただきます。
まずは、スーパーカーに影響を受けた(らしい)
台北のインディーポップバンド『DSPS』
公式サイトによると、2016年にリリースした
1枚目のEP「我會不會又睡到下午了」(Sleep till Afternoon)が
YoutubeとSpotifyで280,000回再生されて、 台湾でさまざまなフェスに出演したそうです。
♪ 我會不會又睡到下午了 Sleep till Afternoon / DSPS
また台湾のバンドの中でもわりと来日するタイプのバンドで、
「シャムキャッツ」や「Homecomings」などの日本のバンドとの交流もあり、
台湾のバンドの中でも日本との距離感が近いバンドです。
アジアのバンドに興味がある人は
ぜひこの「DSPS」からチェックしてみてはいかがでしょう。
続いては、韓国女性シンガーソングライター「ペク・イェリン」さんを
中心メンバーとするバンド「The Volunteers(TVT)」
知ったきっかけはSpotifyのこちらのプレイリスト
韓国のインディ系を中心としたロックバンドの新譜が中心の
プレイリストだと思うのですが、
「The Volunteers」のアルバムがリリースされた時に、
トップにあったのがこの曲でした。
♪ Let me go! / The Volunteers (더 발룬티어스)
最後は、両親が日本人で、マレーシアで活動する
中国語母語話者の男性ソロアーティスト『片山凉太』
♪ UFO / 片山凉太
歌はほぼ全編中国語。中国語はわかりませんが、
オシャレでレトロな雰囲気にマッチする、まったりとした優しい印象。
ゆったり何度でも聴きたい曲です。
いかがでしたでしょうか。 わたしの好みを交えながらではありますが、
言葉がわからなくても楽しめるものを選びました。
異国の音楽を知る・楽しむキッカケになっていれば幸いです!!
(池田)
【I Love NY】「月刊紐育音楽通信 October 2021」
※本記事は弊社のニューヨーク支社のSam Kawaより本場の情報をお届けしています Sam Kawa(サム・カワ) 1980年代より自分自身の音楽活動と共に、音楽教則ソフトの企画・制作、音楽アーティストのマネージメント、音楽&映像プロダクションの企画・制作並びにコーディネーション、音楽分野の連載コラムやインタビュー記事の執筆などに携わる。 2008年からはゴスペル教会のチャーチ・ミュージシャン(サックス)/音楽監督も務めると共に、メタル・ベーシストとしても活動中。 最も敬愛する音楽はJ.S.バッハ。ヴィーガンであり動物愛護運動活動家でもある。
実は数日前に10日間の自宅隔離生活を終えたところです。かかるまい、かかることはない、と過信していたコロナに遂に感染・発症してしまい、まだ後遺症が続いているという状況です。
原因は先月お伝えした黒人ゴスペル・チャーチでの仕事再開です。数度のリハーサルを経て9月第一週から再開したのですが、再開後僅か2週目にして牧師が感染し、重症化して入院(幸い10日間ほどで退院しました)。
私もすぐにPCRテストを受けましたが結果は陰性。しかし、テストの3日後から発熱・咳・鼻水が始まり、更にその3日後には突然味覚と嗅覚が失われ、再度テストしたところ陽性と出ました。よって、最初のPCRテスト時にはまだ潜伏しており、テスト後に発症したのだと思われます。
幸い、今は熱も下がり、咳・鼻水も止まり、隔離生活後の抗原テストの結果も陰性と出ました。引き続きの味覚・嗅覚の欠如以外は時折目眩や脱力感がある程度で、いたって軽症で元気であります。
それにしても今回の教会では、牧師、ミュージシャン、クワイアー含め教会側スタッフは全員ワクチン接種。会衆は全員マスク着用マストで入室の際に体温チェックも行っていましたが、それでも感染は起こり得るということです。
ただ、思えば牧師は宣教の間はマスクを外し、私はサックスを演奏する際は当然マスクを付けることができません。よって、その二人が感染したということで、やはりマスクが最も信頼できる感染予防策の一つであることは間違いないように思います。
それにしても彼(牧師)と私の症状の違いには、いろいろと考えるところがあります。同じような状況下での感染でも、症状に個人差があることはもちろんですが、その理由を検証することは非常に難しいと言えます。スタッフは全員ワクチン接種済みと言っても接種カードなどの証明書は私も見ていないわけですが、そこに嘘があったかどうかは長年の信頼関係にも関わるため考えたくはありません。
Covidに関しては人種と食生活による感染率の違いも度々指摘されていますが、そうした事柄や比較は差別や偏見にも成り得ますし、普段の個々の行動範囲も異なるため、非常に微妙で難しい問題です。私自身は免疫力と新陳代謝力が高く、更にワクチン接種のお陰で重症化を逃れたと思っていますが、それもはっきりと証明できる手立てはありません。
ニューヨークを含め、アメリカでもワクチン接種が進み、マスク対応がしっかりと成されているところは状況はかなり好転していると言えます。しかし、それでも油断は禁物であると自ら反省しております。皆さんもどうぞ引き続きお気を付け下さい。
トピック1:音楽アーティスト達にも忍び寄る分断の兆し
先日、ニューヨークに住むエリック・クラプトン大好きの友人が、わざわざテキサス州オースチンにまで行ってクラプトンのコンサートを観てきたとのことで、現地から興奮気味のテキストが届きました。彼はコンサート映像もいくつか送ってくれて、私もそのコンサートの一部を楽しませてもらうことができました。
現在のクラプトン・バンドは、巨匠スティーヴ・ガッドの他にもう一人、元アース・ウィンド&ファイア(また日本ではドリカムのツアー)などでの活躍で知られるソニー・エモリーが加わったダブル・ドラムという強力なリズム・セクションとなっており、ギターも一時3人であったのが、現在は長年の相棒となっているドイル・ブラムホール2世のサポートのみで、以前よりもクラプトン自身のギターが前面に押し出されているとも言えます。
音楽はもちろん最高ですし、観客の反応・興奮も素晴らしいのですが、現在のクラプトンのツアー活動の背景を知ると、非常に複雑な思いを抱きます。
大型の音楽コンサートは全米規模でかなり回復してきていることは確かですが、そこには様々な規制・対応が行われていることはこれまでにも度々お話ししてきました。
具体的には換気の良い会場の選択(主に野外・郊外)と入場制限(これは最近かなり少なくなってきました)という形になりますが、問題はワクチン接種とマスク着用です。
ニューヨークなどでは、会場入場の際はワクチン接種の証明が必要となり、ワクチン非接種の人はマスク着用、または別エリアでの鑑賞、というのが一つのガイドラインとなっていますが、これは南部などでは全く行われていません。
特にテキサス州とフロリダ州では、「自由」の名の下にワクチン接種確認とマスク着用を罪悪視する向きが強く、ニューヨークと南部は全く別の国、別の現実となっていると言えます。
こうした状況は、社会に更に新たな歪みを生み出します。これまでは対応の度合いの違いこそあれど、パンデミックに対する対応が先決であったのが、今やそれが対応の度合い・違いという尺度によって個人間の対立という歪みをも生み出していると言えます。
パンデミック発生後のこの約一年半あまりを見ると、音楽界・音楽業界の反応・対応はCovid対策に対して思ったより静かであったと言えます。
もちろん今回のCovidによって多くの音楽アーティスト達も亡くなっていますし、特にそうした周辺での危機感や意識というのは極めて高くなったことは間違いありません。
ワクチン開発と接種開始までは思ったよりも早かったのに、普及が思ったよりも進まない現状に対して、エルトン・ジョン、ドリー・パートン、ウィリー・ネルソン、オジー・オズボーン、アリス・クーパー、クイーンやジューダス・プリースト、デミ・ロヴァートなどといった数多くの有名音楽アーティスト達が接種を促すという活動も最近の動きとしては目立ってきています。
しかしその一方で、政治の世界同様に、音楽界でもそれらに逆行または反対する動きが顕著になってきているのも事実です。
このトピックでは、そうした逆行・反抗する動きを批判し、クラプトンの考え方を検証することを目的としていませんので、できる限り事実のみに目を向けるにとどめたいと思いますが、現実としては、クラプトンはワクチン接種(そしてワクチン接種確認)を批判し、聴衆に対する差別となるそうした規制を行う州では演奏しない、とまで公言し、結果的にトランプをサポートするレッド・ステート(赤い州:つまり共和党基盤の州)中心のツアーとなっています。
だからと言って、今のクラプトンのコンサートを観に行く人がみんなトランプや共和党の支持者であるわけではありません。もちろん音楽は政治を超えたもの(であるべき)ですし、実際に私の友人はバイデンに投票したバリバリのリベラル派ですが、長年クラプトンの音楽を愛し、とにかく彼のライヴを観たい一心でテキサスまで出向いたわけです。
クラプトン自身も、もちろんトランプ支持者というわけではありません(一般的な認識としては、むしろ逆)。よってクラプトンは、ロックダウンやワクチンに対する懸念について言及するや否や、トランプ支持者と批判されたことはとても辛かった、とも述べています。
彼の場合は、ワクチン後の副作用が大きく出てしまったことが非常に大きかったようです。何でも、最初のワクチン接種後は約1週間寝込んでしまったそうで、指などの末梢神経に痛みや疼きなどの症状が出てしまったそうです。
更に2回目のワクチン接種では3週間ほど腕が動かなくなってしまったそうで、一時は演奏活動断念という不安と恐怖にも苛まれたと言っています。
これほどの副作用に悩まされた人というのは、私の周りでも聞きませんし、報道でもあまり報告はされていません。ですが、ワクチンの副作用というのは本当に人それぞれですから、決してあり得ないことではありません。
「神の手」という異名まで取るクラプトンですから、手や腕の障害が彼に与えた不安・恐怖というのは察するに余りあります。
しかし、そうした体験の結果として生じることになった、その後のクラプトンの対応や主張は、音楽業界関係者やファンのみならず、アーティスト達にも大きな影響を及ぼすことになりました。
例えば、クラプトンを最高のヒーローとして尊敬するクイーンのブライアン・メイは、
「クラプトンは今も僕のヒーローだ。でも彼とは考え方が違う部分がたくさんある。彼は趣味のハンティングも認めるような人だし、ワクチン反対の主張にも賛成できない。
ワクチン接種が有効であることを示す証拠はたくさんあるし、全体的にみても非常に安全だと言える。もちろんどんな薬にも副作用はつきものさ。でも、反ワクチンという主張はどうかしてると思うし、ワクチンが人を殺すための陰謀だとまで言う人は狂っているとしか思えないね。」とかなり厳しい物言いをしています。
実は私の周りにも、これまでクラプトンと共演したり、彼のバンドのメンバーとしてツアーを行ってきミュージシャン達が何人もいますが、その内の何人かは今回の一件で、「クラプトンからはまた誘われても絶対に参加しない」とか、「クラプトンとはもう二度と一緒に音楽をプレイしない」とまで言い切る人間がおり、私は反応に窮してしまいます。
クラプトン自身も、「仲間のミュージシャンに連絡を取ろうとしても、連絡が取れない。メールも電話も返事すらもらえないんだ」と告白しています。
今回のトピックは自分にとっては非常に深刻な話で、板挟みにもなるような事態であるため、私はこれ以上コメントすることができません。
唯一言えるのは、一日も早くCovidの治療・予防の対策が更に進み、Covid自体は消滅することは無くても、インフルエンザ同様風邪の一種となって、規制がほぼ無くなることを祈るばかりということでしょう。
トピック2:パンデミック下で躍進した音楽ビジネスは?
音楽業界において、今回のパンデミックによって最も深刻な打撃を被ったビジネス分野と言えば、真っ先に挙げられるのがやはり興業分野、つまりライヴ・ミュージックです。
興業界というのは、単にアーティストと小屋(音楽ヴェニュー)と呼び屋(プロモーター)のみならず、広範囲な音楽関連業はもちろんのこと、その他設営、機材、照明、美術、運送、飲食関係、物販(マーチャンダイズ販売)など、実に多種多様な数多くのヴェンダー(下請け業者)達を抱える世界です。
しかもその仕事の発注/受注は単発が基本であり、底辺を支えるスタッフ達の大半は保証の無いフリーランスという立場ですから、これまでの打撃・損害は計り知れません。
音楽アーティスト達は率先してライヴ/ストリーミングに移行していき、小屋も呼び屋もこれに追従して行く形で、パンデミック下での新たな“興業”形態というものが確率されてはいきましたが、そうした形態においては上記のヴァンダー達が完全に抜け落ちる(不要となる)ことになり、彼らはほぼ手も足も出ないという悲惨な状況に陥ってきました。
一方、このパンデミック状況で逆に躍進した音楽ビジネスと言えば、それはやはり、上記にも関わるストリーミング・ビジネスです。ダウンロード以上に単価が低く(または無料)設定されるストリーミングですので、アーティスト達への還元というレベルでは躍進などとは言えませんが、そのコンテンツの権利を保有する音楽出版やレコード会社は、このパンデミック下で着実に売り上げを伸ばしていきましたし、ストリーミングのプラットフォームを有し提供する企業というのは莫大な利益を生み出していきました。
そういった話はこれまで本ニュースレターでも紹介してきましたが、最近になって全く別の音楽ビジネスの躍進ぶりが報道・報告されるようになっています。
それは意外なことに「音楽教育ビジネス」であるのですが、この分野を中心に長年仕事をしてきた私としては、その動きにはいろいろと考えさせられる部分があります。
思えば1980年代半ば、それまで紙媒体のみであったこの分野が、当時“ニュー・メディア”と呼ばれる新しい媒体を取り込んで発展し始めた頃に、私はこの世界に足を踏み入れました。
私の子供時代からあった「ソノシート」(英語では「flexi disc」と呼ばれた塩化ビニール製の薄っぺらく柔らかいレコード)も当時は“ニュー・メディア”であったわけですが、80年代当時の“ニュー・メディア”はカセット(音声)やビデオ(映像)といったテープであり、それらを紙メディアと組み合わせたもの(教材)が次々と出版されました。
言うまでもなく、教育の基本はマンツーマン、つまり対面式による一対一のインタラクティヴなものです。よって、紙というメディアは教材としては大変有効ですが、その教材を伝え教える人がいない場合、つまり紙メディア単体としては情報量・伝達量が極めて限定的になります。
そこで、音声や映像を補助的に組み合わせることによって、受け手に対して伝え教える情報量・伝達量とそのクオリティは格段と上がっていきました。
その後、テープはディスク(CDやDVD)へと移行していき、収録時間や容量、製造コストの面の問題が解決されることによって、音声のみの媒体は消えていき、映像メディアが基本または前提となっていきました。
これに続くのがダウンロード、そしてストリーミングとなるわけで、紙やディスク媒体の教育・教則ソフト自体は衰退の一途を辿っていきましたが、ダウンロードやストリーミングも音楽鑑賞ソフト同様、販売単価の劇的な下落による収支的な問題が大きく横たわり、更にはYouTubeの登場と普及にも圧され、テープやディスク時代のニュー・メディア・ソフトほどの躍進とはなりませんでした。
ただ、そうは言ってもアメリカの場合は、広い国土とその流通システム/購買習慣によって、日本よりは数倍、当初からダウンロードやストリーミングの有料・課金に対する理解は高かったと言えます。
アメリカは広い国土故に全国小売り流通販売の限界という事情があるため、かつては通信販売という巨大市場が存在しました。これが今のネット販売/オンライン販売に移行されているわけですが、更には極めて顧客フレンドリーな返品・返金システムも一般化し、それが今も続いているという背景もあります。
そうした中で、急速に発展していったダウンロードやストリーミングに対して、ユーザーは新たなメディアの有料・課金に関してもある一定の理解を示して“試し買い”し、送り手も段階的な有料化などの手法を使ってユーザー・フレンドリーなアプローチを行っていったと言えます。
その一方で、音楽教育の場合は昔ながらの方法、つまり対面式を好む層もかなりの数に上ります。特に音楽レベルや演奏レベルが上がり、専門教育の度合いが高まるにつれて、対面式や一対一のインタラクティヴ性はマストとなっていきます。
その点、アメリカという国は小学生から専門学校・大学に至るまで、また各地域のコミュニティ・レベルにおいても、実に豊かで質の良い音楽教育のプログラムが提供されていると感じます。
私自身、長年ニューヨーク市内の音楽教室で子供達(時には大人も)に教えてきましたし、ボストンのバークリー音楽院では一時期、教材やプログラムの制作スタッフとしても参加しましたが、どのようなレベルにおいてもそれぞれがしっかりとしたシステム/プログラムを持ち、スタッフも生徒も常に高いモチベーションを保っていることにはいつも関心させられました。
ところが、ここでも昨年のパンデミック発生によって大きな変化が起こります。学校には行けない、対面は不可、という状況の中で音楽教育の現場もストリーミング配信やZOOMなどを使った授業へと移行していくわけですが、それでもその足場は揺らぎ始めます。
新たなコンテンツやプラットフォームを持つ、音楽教育専門外の企業がこのビジネスに参入しており、ユーザー/生徒を次々と獲得し始めている、というわけです。
そうした例の一つとして今回取り上げるのは、フィンランドの新興会社Yousician(YouとMusicianの造語)です。
創業は既に10年程前ですが、アクティヴ・ユーザーはパンデミックに入って約1400万人から約2000万人に増えているとのことです。
Yousisianの場合は、フィンランドという地域性と国自体の規模もあり、英語圏を中心としたグローバルな展開の必要性があったということも背景にありますが、それにしても彼らの躍進ぶりには目を見張るものがあります。
Yousicianのユニークな点は、前述のように、音楽ましてや音楽教育とは全く無縁であった創始者によって運営されていることです。
これは音楽教育という分野においては極めて珍しいことであると言えます。この分野においては、創始者のみならず、全てのスタッフに音楽教育の学位と経験が求められることはいたって常識と言えるからです。
ところが彼らは非ミュージシャン、非音楽教育専門家であることがイノヴェーションの始まりと言い、そこにポテンシャルがあると言います。つまりは、専門的になり過ぎないことで、より広範囲な、また潜在的なユーザー獲得の可能性があるというわけです。
彼らは当初、自分達の子供が楽しんで使えるような子供向けの音楽アプリの開発からスタートしたと言います。その次はギター・チューニング・アプリの開発に取り組み、自分達の身の回りや生活レベルでの音楽学習・音楽体験という分野に目を向けました。
そうしたスタンス/ポリシーは、現在の音楽学習ストリーミング配信においても変わりません。
「私達のユーザーは、楽器を手に入れてもうまくいかなかった人達、また楽器を手に入れようと思ったけど、それが果たせなかった人達なのです」とYousicianのCEOは語っています。
音楽学校にまで通うほどの意欲・熱意はない。でも音楽や楽器を何らかの形で学習したい。しかもCovidによるパンデミックが収束しない状況なのでリモートで行いたい。
そういった層が益々増えている中で、Yousicianのプラットフォームやシステムは彼らのニーズにピタリとはまるようです。
今後は更なるテクノロジー(特に5G)の発展・普及によって、練習セッションやバーチャル・バンド演奏といった形態、更には大物アーティストを起用したマスター・クラス的なスタイルも導入されていくということで、これは正しく今までは願っても叶わなかった夢が実現するイノベーションになると言えそうです。