【MUSIC】イノキ・ボンバイエを掘ってみた
メディアプランニング部の江渕です。
今月1日に燃える闘魂・アントニオ猪木さんが亡くなりました。
ラジオの仕事をしていて感じるのですが、
業界に(特に40代以上の方)プロレス好きがなんとも多いこと!
昭和のプロレスが今のエンターテイメントに大きな影響を与えている事が伺えます。
訃報と同時に耳にする事が多かったのが猪木さんのテーマ曲「イノキ・ボンバイエ」、
正式タイトル「炎のファイター〜INOKI BOM-BA-YE〜」。
プロレスファンには周知の事実ですが、この曲には原曲がありました。
その原曲とは1976年に日本武道館で猪木さんと異種格闘技戦を
繰り広げたモハメド・アリのテーマ曲「Ali Bombaye」です。
元々はアリの伝記映画「アリ / ザ・グレーテスト」のために作られた曲で、
死闘の後、アリは友情の証としてこの曲を猪木さんに送ったと言われています。
「アリ!」の部分を「イノキ!」に変えて、
「イノキ・ボンバイエ」として1977年にレコードはリリースされました。
偉大なプロレスラーの歩みがテーマ曲にも刻まれていたというエピソードですが、
実はこの「Ali Bombaye」にもストーリーがありました。
タイトルの「Bombaye」はコンゴ民主共和国の言葉、
リンガラ語の「Boma ye(ボマイエ)」が語源となっています。意味は「やっちまえ!」。
猪木VSアリから遡る事2年…
1974年、ザイール共和国(現在のコンゴ共和国)にて行われた世紀の一戦、
モハメド・アリVSジョージ・フォアマンの試合、
通称“キンシャサの奇跡”でアリに向けられた声援
「アリ・ボマイエ!(アリ・やっちまえ!)」が歌詞に使われているんです。
当時、ザイールの人々は独裁政権の元、苦しい生活を余儀なくさせられていました。
そこに現れたのは人種差別に異議を唱えてきたモハメド・アリ。
第3世界のヒーローのごとくアリはザイールの人々の想いを一身に受けます。
この熱狂の一部を記録した音楽映画があります。
2010年に日本でも公開された『ソウル・パワー』です。
アリVSフォアマンの試合を盛り上げるため、
プロモーターのドン・キングは「ザイール’74」というコンサートを開きました。
その「ザイール’74」のドキュメントフィルムが『ソウル・パワー』です。
3日間にも及んで行われた「ザイール’74」には
アメリカからジェームス・ブラウンをはじめ、
B.B.キング、ビル・ウィザース、ザ・クルセイダーズなど
当時のブラックミュージック界を代表する名だたるミュージシャンが呼ばれ、
アフリカからは南アフリカ出身で
アフリカンミュージックの女帝と呼ばれたミリアム・マケバや
カメルーン出身のサックス奏者であるマヌ・ディバンゴなどを招集されました。
ルーツ回帰を目指したアフリカ系アメリカンミュージシャンと
解放運動のために戦い続けたアフリカンミュージシャンの融合が実現しました。
試合を前にしたアリの緊張感溢れる姿、キレッキレのJBのパフォーマンスなど、
格闘技好き、ソウルミュージック好きには見どころ満載の作品です。
JBは映画のラストシーンでこう言っています。
「映画を見終わったら、外に出て言ってほしい“俺はれっきとした人間だ”と!」。
燃える闘魂のテーマ曲「イノキ・ボンバイエ」について掘っていくと、
同じく戦う人たちの記録へと繋がった…というお話でした。
(江渕)