【I LOVE NY】話題の「We Are The World」新バージョン
(ここではSTEPのNYスタッフから届く、現地の最新音楽情報の一部をご紹介しています!)
アメリカでは様々な形のハイチ救済活動が進んでいますが、先日のバンクーバー冬
期オリンピックの開会式のテレビ放送で、以前から話題になっていた「We Are The
World」の新バージョンが、ハイチ救済を目的として披露されました。
レディ・ガガやテイラー・スウィフトを始め、「なぜあのアーティストがいないの
か?」という人選に対する疑問や不満は続出したようですが、こうしている今も死に行く人が増えているという危機的状況ゆえ、事は急を要します。何よりも一日も早い救援活動を進めることが先決ですから、可能な人が集まって迅速に進めることが大事です。
その点ではバラエティに富んだアーティストが揃ったと思いますし、途中でセレブなラッパー軍団(?)も登場するなど、今の時代らしい出来になったと思います。
その一方でトニー・ベネットがソロを取り、ブライアン・ウィルソンやグラディス・ナイト、女性ロック・バンドの先駆者ハートのウィルソン姉妹やアース・ウィンド&ファイアのメンバーもコーラスとして参加し、サンタナがギター・ソロを披露したり、しっかりと“新旧”というカラーもよく出ていたと思います。そうした中で圧巻だったのは、やはりセリーヌ・ディオンとバーバラ・ストライザントでしょう。
この二人の存在感にはジェニファー・ハドソンやピンクも吹っ飛んだ感があります。もう一つ強烈な印象を残したのが、今回このプロジェクトのプロデューサーの一人でもあったハイチ出身のワイクリフ・ジーンでしょう。彼の雄叫びのような声はハイチの深刻な状況を代弁しており、切実なメッセージを届けてくれましたし、エンディングで聞かれる「アイチ、アイチ」(ハイチのこと)というハイチのクレオール・アクセントはいつまでも耳に残って涙を誘います。
オリジナルの「We Are The World」から数えて25年後に復活した今回の「We Are
The World 25 for Haiti」ですが、二次的な効果としてオリジナル版の再認識・再評価そして売り上げが高まるという現象も起きているようです。今回の新バージョンを鑑賞すると益々感じることですが、やはりオリジナル版というのは、その出演者といい、寄せられた思いといい、半端でなく物凄いことであったと改めて思いますし、それは当時を知らない若い人達にも強烈なインパクトを与えているようです。
まずその歌声を聴けば、誰が誰であるかが一発でわかるほど、オリジナル版のソリ
スト達の個性と存在感は圧倒的でした。今回の新バージョンでは、かなり似通った歌い方をする人も多く、その辺りも今の時代の音楽の流行・傾向を顕著に表していると言えます。
もう一つはオリジナル版に見られるジャンルの多様性です。スティーヴィー・ワン
ダーとブルース・スプリングスティーンが掛け合いをする、ティナ・ターナーにビリー・ジョエルが続く、ボブ・ディランとレイ・チャールズが共演するなどというのは今の時代ではあり得ないことですし、そのような様々な音楽が共存するという環境・状況すらあり得ないと言えます。
これに対して新バージョンはR&B/ヒップホップ色の強いアーティストが大半を占め、オーバージャンル的な柔軟性がかなり少なくなっていると言えます。最近アメリカの音楽市場では、70年代リバイバルを過ぎて80年代リバイバルが盛んになってきていますが、今回の新バージョンをきっかけとしてオリジナル版が再認識・再評価され、今後の音楽シーンも活性化していけば、それもとても嬉しいことであると思います(余談ですが、高校生である私の娘はオリジナル版でのケニー・ロギンスの歌に感動し、すっかり彼のファンになっています(笑)。
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