【I Love NY】1.アメリカの新社会現象となっている人気TV番組「グリー」

(ここではSTEPのNYスタッフから届く、現地の最新音楽情報の一部をご紹介しています!)この記事は地震前のものです。

1.アメリカの新社会現象となっている人気TV番組「グリー」

4月は新作ミュージカルが次々と登場しました。5月の頭にはトニー賞のノミネート
も発表され、6月には授賞式が行われるので、この時期はブロードウェイもかなり活気づいています。
今年の新作ミュージカルは話題作がいろいろとありますが、何と言っても子供から
大人まで全ての人が楽しめて、ロングランも期待される大衆娯楽作品としては「シスター・アクト」(邦題は「天使にラヴ・ソングを」)がダントツであると思います。

なにしろ、映画に主演したウーピー・ゴールドバーグがプロデューサーであるのも大きな話題です。今年のトニー賞には5部門にノミネートされましたし、ウーピー演じた主役のデロリス役のパティーナ・ミラーは、早くもミュージカル部門の主役ベスト・パフォーマンス賞の呼び声が高まっています。


先日、早速この作品を観てきました。作詞・作曲が映画とは別の人なので、音楽少
し異なりますし、人物設定にも変化があります。しかし、圧倒的なゴスペル・フィーリングと、ドタバタ・コメディ的な楽しさは変わらず、舞台でのショーとして、とても良くできた作品に仕上がっていると感じました。

ところでショーの休憩中、客席の前方で大変な人だかりがあって、何やら大騒ぎと
なっていました。こちらではよくある、セレブの観劇だとわかりましたが、大勢の人に囲まれているのは、どう見ても普通のハイティーンらしき女の子と男の子。パッとみただけではわかりませんでしたが、隣の子連れのおばさんに聞くと、今アメリカで大人気のテレビ番組「グリー」の出演者の3人であることがわかりました。

「グリー」は米FOXテレビで09年から始まった“学園音楽ドラマ/ミュージカル”で、日本でも昨年から放映が始まったと聞きましたので、既にご存じの方も多くおられるかと思います。
あらすじは、こんな具合…オハイオ州のある高校の教師が、自分が学生時代に活動した合唱クラブ(グリー・クラブ)を復活させようと思い立ち、部員を集めます。ところが集まった生徒達は皆、落ちこぼれ、いじめられっ子、いろんな意味のマイノリティといった“負け犬”ばかり。よって部員達はみんなそれぞれに学校や家庭などで問題を抱え、しかも他の教師・生徒やクラブから嫌がらせを受けたりいじめられたりすのですが、そうしたいろんな問題や苦難を乗り越えてお互いに少しずつ理解し合いながら、合唱コンテストを目指していく、というわけです。

この“問題”や“苦難”というのが、なかなかリアリティがあって、結構重いテーマが次々と登場します。高校生の妊娠、家庭内暴力、同性愛差別など、現在のアメリカのどこででも見られる問題が満載なので、視聴者はストーリーをとても身近に感じることができるわけです。

出演しているのは高校生ではなく、皆大体20歳代の俳優達、主演クラスのリア・ミ
シェル(前述の「シスター・アクト」を観に来た一人)は既にいくつかのミュージカルに出演していたり、その他、映画やテレビに出演している俳優も何人かいますが、リアと一緒に「シスター・アクト」を観に来たアンバー・ライリー(太めの黒人の女の子)は先月お話しした「アメリカン・アイドル」で落選したり、同じく「シスター・アクト」を観に来たクリス・コルファー(ゲイでカウンター・テナーの男の子)などは、この「グリー」はテレビ初出演となります。

私は個人的にクリスのファンで、彼の歌唱力は本当に素晴らしいと思いますが、そ
の他の連中に関しては、もちろん皆とても上手いですが、「アメリカン・アイドル」などで決勝まで残るほど圧倒的な歌唱力はあるわけではないと思いますし、アメリカのプロ/アマ・シンガー達の一般的なレベルで言えば、ずば抜けて凄いというわけでもありません。その辺が、視聴者にとって更に身近に感じるところなのかもしれません。

ゲスト出演も「グリー」のもう一つの人気の秘密であると思います。これまで、ブリトニー・スピアーズ、グウェニス・パルトロウ、シャリースなどがゲスト出演していますし、その他にもブロードウェイの人気女優達も何人か出演しています。
もう一つは、この番組のファンである有名人も多いということです。例えばジェニ
ファー・ロペスなどはゲスト出演を切望しているそうですが、この番組の大ファンである有名人のトップと言えば、何と言ってもオバマ大統領でしょう。なんでもオバマ大統領は家族全員で「グリー」の大ファンであるそうです。 
アメリカの国民的行事として、他とは比較にならない視聴率の高さを誇るスーパー
ボウルに次ぐ視聴率を記録したそうですから、その人気の高さもおわかりいただけるかと思います。

そんなわけで、今や「グリー」は単なる人気テレビ番組というだけでなく、アメリ
カの社会現象の一つと言っても過言ではないと思います。先月もお話した「アメリカン・アイドル」などの“タレント・ショー”と共に、「グリー」も今後スターを生み出す登竜門になる可能性は大です(実際、前述の3人などは既にスターです)。
“地道なライヴ活動を経てレコード会社に認められてデビュー”というパターンは、今後益々減っていくのかもしれません。

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