【I Love NY】ありがとうレス・ポール
(ここではSTEPのNYスタッフから届く、現地の最新音楽情報の一部をご紹介しています!)
アメリカでは先日エドワード・ケネディ上院議員が亡くなり、とても大きなニュースとなりました。ジョン(元大統領)とロバート(元司法長官)に続き、テディことエドワードが亡くなり、政界におけるケネディ家のパワーは文字通り終焉を迎えたと言えます。
エドワードは、ジョンやロバートほど表舞台には出ませんでしたが、民主党リベラル派の代表として信念の人、または政界のご意見番とも言われ、生涯現役で活躍し、多くの人に愛されました。オバマ大統領の選挙戦では、脳腫瘍の摘出手術直後にもかかわらず、ドクターストップも無視して民主党大会に応援に駆けつけ、拍手喝采を浴びました。
政界に続き、音楽界でもみんなに愛された生涯現役の伝説的人物が亡くなりました。
音楽が好きな方ならその名前を知らぬ人はいないと思われるレス・ポール氏です。
彼の場合はその音楽よりも彼が作り上げたギターが有名になりましたが、彼のギター・プレイ自体も非常にユニークで革新的なものでしたし、アナログ・ディレイやマルチ・トラック・レコーディングの元祖(彼が発明したのは8トラックのテープ・レコーダー)としても有名な人です。彼は94歳で亡くなるまで、マンハッタンのIridiumというジャズ・クラブ(Iridiumの前はFat Tuesdayというクラブ)で毎週月曜日に演奏し、晩年になって更に人気を高めていました。1月に行われた彼のバースデイ・ライヴには毎年様々なジャンルの大物ギタリスト達が集まり、他では見られない貴重な競演を繰り広げていました。
もともと彼は弾きまくるタイプのギタリストではありませんでしたが、自分のトリオではメンバー達にリラックスした自由なスペースを与え、自分はそれを楽しみながら、随所でいぶし銀のようなトリッキーで味わい深いプレイを披露していました。
私は彼がまだ88歳であった2003年の春にロング・インタビューをさせてもらいました。非常に陽気できさくな人でしたが、いつまでも好奇心旺盛な子供のようでファンキーな人と言った方が適切かもしれません。彼からは数多くのストーリーを聞かせてもらいましたが、その口ぶりは昔を思い出して懐かしむという感じではなく、「ワシは今も自分の道を歩き続けているんじゃ!」といった気概を感じました。
マネージャーである息子さんはおとなしい人で、父親の方が元気なやんちゃ坊主といった感じ。なにしろステージで演奏中、ファンがカメラを彼に向けたりすると、笑いながら中指を立てたりするのですから、とんでもないファンキー爺さんです(笑)。
またこれでアメリカ音楽界の伝説・至宝が一人亡くなられたのは残念でなりません。
なにしろ彼がポピュラー音楽界に残した業績は、あまりに大きかったわけですから。
皆さんは、レス・ポール・ギターやマルチ・トラック・レコーディングの無い音楽なんて想像できますか?彼がいなければ今のような音楽は無いと言っても過言ではないと思います。そんな思いを胸に、全てのミュージシャン達が彼に感謝していることは間違いないでしょう。やはりレスには「さようなら」ではなく「ありがとう」と言いたいと思います。