【I Love NY】ニューヨークは秋の大物&話題コンサートが目白押し

(ここではSTEPのNYスタッフから届く、現地の最新音楽情報の一部をご紹介しています!)

ニューヨークは秋の大物&話題コンサートが目白押し

夏が終わると、バケーションや海外公演などを終えた大物アーティスト達がニューヨークに集まってきます。例えばニューヨークを代表する大型ホールのマジソン・スクエア・ガーデンは、11月頭から始まるバスケットのNBAのシーズン開始に合わせるかのように、ゲームの合間をぬって大物コンサートが目白押しになってきます。

例えばプレシーズン(今年はストでプレシーズンは無くなるようですが)の中では10月末に懐かしのデュラン・デュラン。11月はフー・ファイターズにジョシュ・グローバン、そして人気最高潮のケイティ・ペリー(一日のみ)とテイラー・スウィフト(二日間)が続きます。ケイティ・ペリーとテイラー・スウィフトは当然のごとくソールドアウト。
ニュージャージー・サイドで行われるジェイZとカニエ・ウェストのジョイント・ツアーや、アクセル率いる再生ガンズ・アンド・ローゼズなど、他の大物アーティスト達のチケットの売れ行きも好調のようですが、最近はソールドアウトだからといってチケットが本当に即完売とは言えなくなりました。それは以前にもお話しした公認ダフ屋サイトStubHubが大人気だからです。


いわゆる従来のダフ屋はもちろん、個人でチケット売買を行っている素人ダフ屋達もこぞって正規チケットを買い漁り、StubHubを通して転売しているわけです。
もともとStubHubはチケット発売日を逃して買えなかった人など、どうしても行きたいコンサートのチケットを手に入れられるチャンスを提供するという趣旨であったわけですが、
それも今やStubHubのシステムを利用して一儲けしようという人達がどんどん増え、公式の名の下にチケット売買の無法地帯と化していると行っても過言ではありません。

StubHubが出てきた当初は、あまりに高額なチケット販売希望金額もありました。そのために結局チケットが売れずに空席になってしまうという由々しき事態も起こりました。
特にそれが酷かったのは音楽よりもスポーツ、特にヤンキースのチケットです。
09年のヤンキース新スタジアムの開幕当初は、チケットを買い占めたダフ屋や一般人達が法外な金額でチケットを転売し、結局買い手が付かず、空席が目立つ結果になり、方々から批判を受けました。音楽(コンサート)においてもこうした事態はいくつかあったようですが、最近は販売希望金額も、大分落ち着きを見せてきているようです。

このような状況はあっても、興業は大旨好調のようです。アメリカでも音楽業界の危機は随分前から言われていましたが、「興業は絶対に生き残る」というのが大多数の意見でもありました。
そうした中で、最近ニューヨークでメタル・ファン達が大盛り上がりしたのが、メタリカ、スレイヤー、メガデス、アンスラックスというスラッシュ系メタル四天王が勢揃いしたビッグ4のコンサートです。既にヨーロッパやカリフォルニアをツアーし、先日9月14日にはニューヨークにやってきて、ヤンキー・スタジアムでコンサートが行いました。
皆それぞれに超個性的で熱狂的なファンの多い4バンドですが、ニューヨークと言えば何と言っても地元バンドのアンスラックスです。メンバー全員がヤンキースの大ファンですし、ドラムのチャーリー・ベナンテと、彼の甥っ子でもあるベースのフランク・ベロはヤンキースの地元ブロンクスの出身です。同日はアンスラックス黄金時代のボーカル、ジョーイ・ベラドナが完全復帰した8年ぶりの新作「ワーシップ・ミュージック」の発売日でもあり、ヤンキー・スタジアムはアンスラックス・ファンが他のファンを圧倒しました。

さらにもう一つ、大きな話題となったのが、ブロンクスにおいて同日が「アンスラックス・デー」と制定されたことです!コンサートの前の授与式の模様はこちらのテレビでも放映されましたが、若き38歳のブロンクス区長、ルーベン・ディアス・ジュニアがコンサートの直前、ヤンキー・スタジアム内にあるハード・ロック・カフェでメンバー達を前に宣言書を読み上げました。しかも、この宣誓文というのが実に見事でした。
「Persistence Of Time」、「Bring The Noise」(懐かしきパブリック・エネミーとの共演作)、「Fistful Of Metal」、「Keep It In The Family」、「Among TheLiving」、「State Of Euphoria」、「Sound Of White Noise」、「Caught In AMosh」といったアンスラックスの曲名・アルバム名を巧みに取り込んだユーモアたっぷりの超名文(まあ、区長自身が作った文章ではなく、メタル好きのスタッフが作成したのは明らかではありますが)で、これには区長の隣りに並んだメンバー達も大喜びしていました。

こんな粋な計らいと粋な文章を区長が発表するなどというのは、ちょっと日本では考えられないのではないでしょうか。いや、相手が悪魔崇拝的なスラッシュ・メタルですからアメリカでもちょっとあり得ないことかもしれません。思えばアンスラックスというバンドは、10年前の9.11のテロの後、炭疽菌テロ事件がによって、意外な注目を浴びて、不当なバッシングを受けることにもなってしまいました。アンスラックスとは炭疽菌の意味ですし、事件が社会に与えた影響の深刻さから、世間は彼等にバンド名変更を迫るという結果にもなってしまったわけです。彼等も地元ニューヨークが受けたテロですから、事態の深刻さは充分に理解していましたし、一時はバンド名変更も考えたそうです。しかし、周囲のミュージシャンやファン達からの応援もあって、「俺たちはバンド名は変えない!」というしっかりした立場を取って、活動を続けました。そして今、こうしてテロと共にあれから10年が過ぎ、ニューヨークも元気になって、ニューヨーカー達に再び大歓迎され、新作も出て最強メンバーが復活したのは何とも感慨深いことと言えます。

それにしても今回の素晴らしい決断を下したブロンクス区長のルーベン・ディアス・ジュニア(民主党)と言う人は、なかなかの人物と言えるでしょう。彼は父親の代にプエルトリコからニューヨークにやってきた移民で、プエルトリコ系黒人というか、アフリカ系プエルトリコ系アメリカ人です。父親のルーベン・ディアス・シニアはニューヨークの上院議員(民主党)ですが、こちらはキリスト教の祭司という立場もあって超保守的で、未だに同性婚に対して反対活動している時代遅れの政治家です。一方のジュニアは、以前ブルース・スプリングスティーンがプロテスト・ソングを作って歌ったことでも有名になったディアーロ事件(ニューヨーク市警の警官達が、銃も持っていないアフリカ移民のアマドゥ・ディアーロという青年に向かって41発も集中発砲して殺した痛ましい事件)の犠牲者の遺族をサポートし続けたり、「虹の反逆者」という進歩的なグループを設立して政治運動や市民運動を行うなど、公民権・人権活動家としても知られる非常にリベラルな政治家です。私などは個人的に彼が今後ニューヨーク市長から大統領への道を歩んでいってくれればなどと思うほどですが、彼のような人間が政治の中にいて、また音楽に大きな理解を示してバックアップする(しかもサルサやヒップホップ世代の彼が、スラッシュ・メタルのバンドを表彰)というのも、この国の音楽文化の力強く素晴らしい点であると言えます。

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