【I love NY】孤高のジャズの巨人がロックのホールで咆える!?
(ここではSTEPのNYスタッフから届く、現地の最新音楽情報の一部をご紹介しています!)
「フリー・ジャズ」という言葉やジャンルは既に死語と言えるかもしれません。
オーネット・コールマンが登場した頃、「フリー・ジャズ」と呼ばれた音楽は本当に「フリー」でした。つまり「フリー・ジャズ」はビバップやスイングといったそれまでのジャズのスタイルから完全に自由なものであっ たからです。
しかし、追従者やコピーや亜流が次々と登場する中で「フリー・ ジャズ」は一つのジャンルやカテゴリーになってしまいました。
そこには既に自由は存在せず、「フリー」というスタイルをのぞらえているだけと言えました。そうした中で、もう一人のフリー・ジャズの巨人と言われるセシル・テイラーは常に“自由な音楽”を聴衆に披露してきました。
ソロ、デュエット、トリオ、グループ、ビッグバンドによる様々な活動、ダンスや他のパフォーミング・アートとの共演など、来年で80歳になるセシル・テイラーの活動は常に精力的で自由であると言えます。
60年代以降、彼は一度もいわゆるスタンダード曲をレコーディングしていないということにも、自由な創造性に対する彼のこだわりが感じられます。昨年惜しくも世を去った偉大なジャズ・ドラマー、マックス・ローチは度々セシルとデュオを行っていましたが、「自分にとってセシルは、バド・パウエル(偉大なジャズ・ピアニスト)の模倣者達以上にバドのような存在なんだ」という彼の言葉は非常に印象的です。
そんなセシル・テイラーが今月、なんとロック系のホールとして人気のHighline Ballroomでソロ・ピアノを披露します(ちなみに、前項のラファエル・サディークがその2日前に同ホールに出演します)。
オールスタンディングのホールという、ジャズ・クラブとは全く異なるシチュエーションの中で、どんな観客達が集まり、どんな音楽を聴かせてくれるのか、とても楽しみなところでもあります。
しかし、セシル自身は演奏する場所に関しても全く自由であるようです。なにしろセシルは60年代、グリニッジ・ヴィレッジにあった小さなフォーク・クラブでボブ・ディランのバックを務めたこともある人ですから。
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