【I Love NY】夏のコンサート雑感
(ここではSTEPのNYスタッフから届く、現地の最新音楽情報の一部をご紹介しています!)
日本は異常な猛暑と聞きますが、こちらニューヨークは7月前半は扱ったものの、そ
の後は比較的過ごしやすい夏となりました。
今年は例年よりもコンサートに多く足を運ぶことができました。有名無名、様々なジャンルのコンサートを観ましたが、中でも印象深かったのは、セントラル・パークのサマー・ステージという野外コンサートの一環の中で行われたゴスペル・グループ、クラーク・シスターズと、ニューヨーク郊外のジョーンズ・ビーチで行われたクロスビー、スティルス&ナッシュ(CSN)のステージでした。
クラーク・シスターズはアメリカのゴスペル界では知らぬ人はいないほどのスーパースター。アレサ・フランクリンとグラミー賞を分かち合ったことでも、その実力と人気がわかります。リーダー格であるトゥウィンキーの作編曲力によって数々の大ヒット曲を持ち、末っ子カレンを筆頭にした圧倒的な歌唱力とハーモニーで、実力者だらけのゴスペル界にあっても飛び抜けた存在と言えます。
このクラーク・シスターズが野外で、しかも無料コンサートを行うというのですから、ゴスペル・ファンの黒人達が大挙押し寄せました。
実際のコンサートを観ると、“ゴスペル・ファン”と書くのは語弊があるかもしれません。というのも、観客には白人や私のようなアジア系、そして単純な音楽ファンという人達もいましたが、そのほとんどは黒人のクリスチャン達で、パフォーマンスが始まると、セントラルパークのステージが巨大な野外礼拝堂と化してしまったからです。私は毎週こういった中で演奏しているので珍しいことではないのですが、一緒に連れて行った娘やその友人、また有名なゴスペル・グループということで足を運んだ音楽ファン達は、そのエネルギーの凄まじさにショックを受けていたようです。
映画でご覧になったり、実際の黒人教会を訪れた方にはおわかりだと思いますが、
いわゆるゴスペル・チャーチと呼ばれる黒人達の教会の礼拝は“静かで厳か”の対局にあるとも言え、信者達は絶叫したり泣き叫んだり泣き崩れたり、牧師とのやりとりや掛け合いも騒々しいものがほとんどです。さすがにこの日は泣き叫んだり泣き崩れたりする人はいませんでしたし、全員がハッピーに大騒ぎしてエンジョイしていましたが、ゴスペル・シンガーまたはミュージシャンというのは、基本的にエヴァンゲリスト(ゴスペルつまりキリストの福音を伝える伝導師)ですので、彼等はステージでは牧師と同じ役目をするわけです。ですから、聴衆も教会の信者達と同じようなノリになるわけなのです。
セントラル・パークのサマー・ステージは毎年、様々なジャンルの音楽が
フィーチャーされ、それぞれの音楽によって様々な人種・宗教の人達が集まります。それが単なるコミュニティー・センターやホール、または礼拝堂ような限定された空間ではなく、緑と青い空に包まれた公園の野外ステージで行われ、その音楽とは別の国や人種・宗教の人達、そして単に通り合わせた人達も気軽に訪れることができるのが、なんともニューヨークらしく素敵なところだと思います。
もう一つとても印象的であったCSNのコンサートも、セントラル・パークの
サマー・ステージに負けず劣らず(というか、それ以上に)開放的な場所と言えます。そこはマンハッタンから車で一時間くらいのジョーンズ・ビーチという所にある野外シアターなのですが、潮の香りや穏やかな海風もタップリ味わえる、美しくピースフルな場所と言えます。