【I Love NY】月刊紐育音楽通信 August 2015
(ここではSTEPのNYスタッフから届く、現地の最新音楽情報の一部をご紹介しています!)
「月刊紐育音楽通信 August 2015」
地球温暖化に対する警告やアクションは、アメリカでも非常に盛り上がっています。
その旗頭の一人がオバマ大統領であり、9月にニューヨークにもやってくる
ローマ法王でもあるわけですが、この地球温暖化説には根強い異論・反発も多々あります。
大雑把に言えば、基本的にオバマ大統領に呼応している民主党に対し、共和党には
地球温暖化説とその対応に異論を唱える議員が数多くいます。
ですが、そこには様々なファクターが潜んでいて、中々一筋縄ではいきません。
一般的には、化石燃料系エネルギー業界との癒着とその利潤に頼っている議員達の
多くが地球温暖化は嘘であると公言していますが、
中には「地球が暖かくなるのは大いに結構なことだ」と言い出す議員までいて、
話は知的レベルの問題(?)にまで広がってしまっています。
一時“夢の天然資源”と言われたシェール・ガスも、経済性と環境面の問題から
相当な反発を受けて立ち往生という状態ですが、ここに原子力産業との関連も加わり
(“地球温暖化説=原子力産業の陰謀説”など)、地球温暖化の問題は、
どういったエネルギー資源に立脚するのかによって主張やロジックも異なって複雑化しており、
地球規模の気候変化という問題よりも、エネルギー面との関係(癒着?)によって
大きく左右されてしまっているようです。
確かに化石燃料による環境破壊が深刻であることは間違い無いと思いますが、
先日「地球は確かに温暖化しているが、そのピークは既に過ぎており、
この先地球は氷河期に向かう」という学者の説が一部で話題になったりもしました。
今、ニューヨーク(マンハッタン)は新ワールド・トレード・センターの
オープンも加わり、ダウンタウンの再開発が大変注目&話題ですが、
このダウンタウンは30年以内に水没するであろう、という説もあります。
これは、2012年のハリケーン・サンディと同規模またはそれい以上のハリケーンが
この数年以内にやってくるという説と、土地の低いダウンタウンの水位が
確実に上がってきているというデータに基づいた話のようです。
一体何を信じていいのか私にはわかりませんが、少なくとも、人間も地球も、
その場しのぎの対処療法や対応策ではなく、その自浄能力を最大限に活かすために
最大限のサポートをする、というアイディアが益々必要になっているように思います。
トピック:アップル・ミュージックはストーリーミングを制するか
「米国時間6月30日に米アップルが音楽配信サービス「アップルミュージック」を
開始した。月単位の定額料金を支払うと配信しているすべての音楽が聞き放題になる
「サブスクリプション型」と呼ばれるもので、日本向けにも同時に
サービスを開始した」2015/7/3 18:00 日本経済新聞より
日本でも早々報道されたように、いよいよアップルも音楽ストリーミング・ビジネスに
参入してきました。早速翌7月1日には、”3ヶ月間無料トライアル”のお知らせが、
アップル・ユーザーを中心に一斉にメール配信されました。
iWatchの登場もあり、アップルの人気・注目度は相変わらずですが、音楽・映像・
デザインなどのアート系は除くと、若い世代にとっては金額的にも安めの
Androidの方が主流ですし、私のように小さな画面・小さなキーが苦手な中高年層にとってもAndroid人気は益々高まっています(そうは言っても私はまだアップルに頼っていますが)。
スマホ戦争も熾烈ですが、アップル・ミュージックが宣戦布告したことによって、
デジタル音楽配信サービスは益々熾烈な争いとなってきたと言えます。
権利関係等の問題で音楽業界やアーティスト達からは叩かれているとは言え、
アメリカの若い世代からも絶大な支持を受けているSpotify、
グーグルが社運をかけてセールス展開しているとも言われるGoogle Play Music、
そしてXBox MusicやDeezerがこれに続き、以前本稿でもご紹介したJay Z率いるTidalが
切り込んできています。
どれもそれぞれに魅力やアドバンテージを持っていますし、いったいどれを買えば
(使えば)いいのだろうか、というのは若い人達にとっても迷うところであると言えます。そうした状況を反映して、最近は様々なメディアにおいて、これらのサービスの比較が
取り扱われていますので、本稿でもそうした比較を参考にしつつ、今後の動向>を
見つめてみたいと思います。
まず、前述の通り、上記のApple Music、Spotify、Google Play Music、Xbox
Music、Deezer、Tidalという6つのデジタル音楽ストリーミング・サービスは、
当然のことながら、どれもプラットフォームはiOSにもAndroidにも対応しています。
しかし、ラップトップなどコンピュータ・レベルの対応で考えると、各社は微妙に
そのスタンスを変えています。
例えば、MacとPCにしっかりと対応しているのはApple MusicとSpotifyとDeezerで、
完全にスマホ・ターゲットの戦略を取っているGoogle Play Musicを別にすると、
XBox MusicとTidalはMacへの完全サポートはされていません。
XBox Musicはブランド的に仕方ないと思いますが、TidalがPC寄りであるのは
少々意外であるとも言えるところです。
ちなみに、かつては破竹の勢いのあったBlackBerryをサポートしているのはSpotifyのみ
というのも、別の面で興味深い点です。
そしてもう一つ、これも以前本稿でもお話したカー(車)対応に関してはDeezerが
強いアドバンテージを持っていると言えます。
このように、プラットフォーム一つとっても、上記6社にはそれぞれ独自の
スタンスが見られます。
次にカタログ数ですが、これは実はDeezerが一番多いとも言われていますが、
3500万曲以上という数字が、その他の3000万曲以上という数字と決定的な差があるのかは、
カタログ内容にも絡んでくるので何とも言えないところです。
ただし、Xbox Musicはアメリカにおいては約1800万曲と言われていますので、
他の5社に少々後れを取っている感は否めません。
サウンド・クオリティに関しては、どこも200〜300kbpsのレンジ内ですが、
その中ではSpotify、Google Play Music、Deezer、Tidalの4社が320kbpsとなっており、
中でもTidalが1411kbpsのHiFi、そしてDeeserは同じく1411kbpsのHiFiにおいて16ビットの
FLACオーディオを実現させているのが特徴的です。
逆に、Apple Musicは256kbpsと発表されており、Xbox Musicは192kbpsと
少々差が出ています。
ミュージック・ビデオに関しては、全社可能となっている中で、Spotifyだけが
ショート・ビデオ・クリップのみ近日登場となっていて、少々遅れを取っています。
ラジオに関しては、どこもOKかと思いきや、実はTidalは不可となっています。
ポッドキャストに関しては、Deezer以外は全社ほぼ不可ですが、Spotifyは近日発売の
バージョンで対応可能となるようです。
そして、使いやすさの点でよく取りざたされるオフライン・モードですが、これは
今後益々必須機能の一つとなると思われますが、全社が有料サービスにおいては
可能となっており、更にDeezerは有料・無料問わず可能となっています。
さて、その無料部分に関するサービスですが、Xbox MusicとTidalでは全く対応して
いませんが、他は各社対応が異なります。まず、Apple Musicでは、「Beats 1」という
インターネット・ラジオ、そして同サービスにおいて1時間に6曲(6回)までの
スキップが無料となっています。
Spotifyは、モバイル・サブスクリプションの場合に1時間6曲(6回)までのスキップが
無料である他、広告サポートされた曲は無料となっています。
Google Play Musicも、広告サポートされた曲は無料ですが、
それはまだウェブ上での話で、肝腎のiOSとAndroid対応は、間もなく発売される
バージョンからとのことです。
Deezerは、スタンダートのサウンド・クオリティに関しては全て無料ということで、
その点に関しては他社よりも一歩ユーザー・フレンドリーであると言えます。
若い世代を中心に、今や無くてはならない存在となってきている、
ソーシャル・ネットワークへの対応に関してはApple Musicの独壇場で、
他社が全て対応していないのに対して、Apple Musicではアーティスト・サイドと
直接交流できる「コネクト」でしっかりと対応しています。
もう一つ、今後益々重要になってくるであろうと言われる
VAI(Voice AssistantIntegration)つまり音声認識サポート機能ですが、
これもApple MusicはAppleの看板機能の一つとも言える「Siri」を
搭載(iOSのみ)することによって、他社をリードしています。
SpotifyとDeezerとTidalはVAI対応は無しですが、Google Play MusicはAndroidに
関しては「Google Now」の機能で対抗しています。
また、Xbox MusicはWinowsのみ「Cortana」の機能が可能になっています。
最後にサブスクリプション料金(月額サービス料)ですが、プライス・レンジ的に
見ると一番高いのは実はSpotifyで$9.99から$29.99まで。
Deeserはエリート・バージョンは$19.99ということで、やはり他社よりは
少々高めです。
次にサウンド・クオリティにこだわるTidalは、プレミアムは$9.99ですが、
HiFi対応は$19.99となっています。
Apple Musicは、基本的には$9.99ですが、6台のディバイスまで使用可能な
ファミリー・プランは$14.99と、家族の多いアメリカのファミリーには嬉しい
ファミリー・フレンドリーな対応を行っています。
これ以外のGoogle MusicとXbox Musicは$9.99という価格を保っています。
こうして見てみますと、機能やスペックなど、多少の優劣はあるにしても、
AppleMusicが内容的にも魅力的で先進性を持っていることは間違いないと思います。
まず、Apple Musicの場合は何といってもコンテンツ面以上に、
“音楽の楽しみ方のすべてを一つにする”、“自分のライフスタイルにあった形で
24時間音楽を楽しめる”というコンセプト、つまり”音楽”と”ライフ”を結びつける
というコンセプトがしっかりしていると言えます。
例えば、ソーシアル・ネットワークへの対応は前述のように「Connect」が
大きな魅力を発揮していますし、ニューヨークやロサンゼルス、ロンドンなどの
スタジオから世界に向けて、毎日24時間オンエアされる「Beat 1ラジオ」という
無料インターネット・ラジオ・サービスを備え、より一層気軽な音楽鑑賞、
つまり生活の中に音楽を届けるスタンスを持っていると言えます。
この「Connect」と「Beat 1ラジオ」について、少し補足説明してみたいと思います。
まず、「Connect」は、元々「Ping」という機能を名称変更したものですが、
AppleMusic内のタブからアクセスでき、音楽に限らず、動画や静止画やテキストなどの
投稿を見ることができます。アーティストとファンとのつながりをApple Music上でも
実現できるようにというコンセプトですが、そうしたコネクションというのは、
既にTwitterやFacebookなどのサービスが完全に普及しています。
よって、Apple MusicはTwitterやFacebookにも対抗しているとも言えるわけで、
AppleはこのApple Musicを使ってソーシャル・ネットワーキングの世界制覇を
音楽のレベルから目論んでいると言うこともできます。
ただし、「Connect」に限らず、こうしたソーシャル・ネットワーキングには
課題というか根本的な問題も孕んでいます。
つまり、「Connect」があっても、アーティスト・サイドが実際にファン達との交流に
積極的になるか、ということです。これはアーティスト・サイドが
メジャーになればなるほど、その手間隙を考えれば疑問視する向きもあります。
逆に新しいアーティスト達にとっては、この「Connect」は
一層有効な手段とも言えます。YouTubeはミュージック・シーンや
ミュージック・ビジネスにも大きな変革(革命と言っても良いでしょう)を
もたらしましたが、Apple Musicの「Connect」に関しては、ユーザーがストリームする
音楽を探すタブによって、特に新しいアーティスト達やマイナーまたは
埋もれたアーティスト達にとっては、自分達の音楽が発見されやすくなるという
アドバンテージがあるわけです。
ただし、これは「Connect」というプラットフォームがTwitterやFacebook以上に
(またはそれらと同等なほど)の市民権を得た上での話となります。
つまり、「Connect」自体は実はかなり壮大なビジョンと野望を持ったAppleの
“戦略兵器”であるとも言えるわけで、今後の推移が注目されると思います。
もう一つの「Beats 1ラジオ」ですが、このBeats 1は“世界中でいつもオンエア”と、
“音楽を愛する人たちが作るプログラム”を謳い文句にしています。
“Beats 1は、真のグローバルなサウンド体験をお届けします。
毎日24時間、ロサンゼルス、ニューヨーク、ロンドンのスタジオから
世界100か国以上に向けてオンエア。あなたがいつどこにいても、ほかのリスナーたちが
聴いているものと同じ最高のプログラムが飛び込んできます。
独占インタビュー、ゲストホスト、音楽業界の最新情報もお楽しみに”
“Beats 1は、革新的なラジオプログラムを生み出す場所です。メインDJによる
新しいミュージック・プログラムに加え、私たちは世界で最もビッグなアーティストを
数人招き、素晴らしいラジオ番組を作りました。ここだけでしか聴けない週替わりの
DJミックスから、人生を変えたアルバムについて著名なミュージシャンが語る
インタビューまで、その内容は様々です。Beats 1は、オールドスクールヒップホップから
フューチャリスティック・ポップまで、あらゆるサウンドをお届けします。
すべての曲は、音楽をこよなく愛する人たちの手で厳選されたものです”
という解説がオフィシャル・サイトでは謳われていますが、これらは確かに
決して誇張では無いと言えます。
これまでのオンデマンドのストリーミング・サービスでは、ユーザーに
自主性や能動的態度が無い限り、ユーザーはどういった曲を検索すれば良いのかが
わからないとも言えました。
逆に言えば、ストリーミング・サービスというのは、音楽は好きだけれども
受動的態度のリスナーに向けて、その裾野を広げるというコンセプトを持っていると
言えます(つまり、マニアや熱狂的ファンにはストリーミングは無用・不要であるとも言えま
す)。
そこで、ラジオで日々気軽に音楽を楽しみたいというリスナーが、
お気に入りの音楽を見つけてストリーミングをするチャンスを更に提供できるよう、
このAppleMusicはしっかりと組み立てられているわけです。
かつては、ラジオがミュージック・シーンを生みだし、ミュージック・ビジネスをも
生み出しました。そうしたムーブメントのニュー・エラ(新時代)を、
このAppleMusicは目指している、というのは大袈裟でしょうか。私はそうは思いません。
何しろAppleは常に“ライフスタイルの変革”を目指している集団です。
そこがAppleが他の音楽系企業とは異なる点であると思いますし、Appleの動きや戦略に
、世の中がどう動き、追従していくのかが、いつも興味深い点であると感じています
(そういう自分も、かなり踊らされているかもしれませんが…)。