【I Love NY】
(ここではSTEPのNYスタッフから届く、現地の最新音楽情報の一部をご紹介しています!)
ニューヨークは相変わらず暖冬が続いています。先日は今年初めての雪に見舞われましたが、翌日の雨と、その後の春のような温かさで、あっと言う間に雪も溶けてしまいました。
街が冬景色ではない、というのは映画やテレビの撮影には好都合のようで、今年に入ってもマンハッタンの各地ではロケ撮影を見かけることが多いと言えます。
ロケ撮影と言えば、ストリートにトレーラーが並んでニューヨークの交通渋滞をエスカレートさせる(?)のが常ですが、既に巨大クリスマス・ツリーが撤去されたロック フェラー・センターの一角にあるラジオ・シティ・ミュージック・ホールでも、最近巨大トレーラーが何台も止まっているのをよく見かけます。
実はこちらの方は撮影ではなく、音楽イベントのためのものです。このラジオ・シティ・ミュージック・ホールというのはマジソン・スクエア・ガーデンと共に、ニューヨークを代表するコンサー ト・ホールの一つでもあり、大物アーティストの出演が目白押しの場所でもありますが、マンハッタンのど真ん中、ロックフェラー・センターの一角ということもあって、 大型機材車などの搬入・収容スペースがありません。よって、コンサートの当日また
は前日の夜から、大型トレーラーがホール脇のストリート上にずらりと横付けされることになるわけです。
このニュースレターを書いている今日も、ラジオ・シティの脇にトレーラーの一群が並んでいるのを見かけましたが、今晩はレニー・クラヴィッツのコンサートでした。
今はマジソン・スクエア・ガーデンの方はNBA(バスケット)とNHL(アイス・ホッケー)が真っ盛りですし、ラジオ・シティの方は年末恒例の人気ショー、「クリスマス・スペクタキュラー」も終わったので、これからしばらくはラジオ・シティでの人気大物アーティストのコンサートが続きます。レニー・クラヴィッツに続き、2月はバリー・ マニロウやアレサ・フランクリン(まだ歌えるのか、という不安が方々から聞こえてい ますが…)といったレジェンドが登場しますが、4月は90年代ブリット・ポップを代表するバンドで昨年復活を果たしたパルプ、5月は今カントリー・ポップ界で大旋風を巻き 起こしているレディ・アンテベラム、才能溢れるフォーキーな女性シンガー・ソング・ ライターのファイスト、ワールド・ミュージックのセンスなどを巧みに混ぜ合わせたサウンドで今大注目のフローレンス&ザ・マシーンといった旬のアーティストが続きます。
スポーツに関してはNBAとNHLも話題ですが、アメリカのスポーツ・ファンにとって、 今は何と言ってもスーパー・ボウルを控えたNFL(フットボール)です。しかも今年は地元ニューヨーク・ジャイアンツが4年ぶりにスーパー・ボウル出場を決めたため、ニューヨーカーの中でもジャイアンツ・ファンの熱狂ぶりは頂点に達しつつあります。しかも相手は同じ北東部のボストンを本拠地とする強豪ニューイングランド・ペイトリオッツです。北東部対決というだけでなく、ニューヨークにはボストン出身の人も非常に多いので、試合前からファン達の“舌戦”は賑やかなようです。
日本では今も野球が一番人気でしょうし、フットボールと言えばラグビーとサッカーが人気ですし、アメリカン・フットボールの人気は今一つだと思いますが、アメリカではスポーツの頂点は野球ではなく、何と言ってもフットボールなのです。基本的にフットボールの試合は”Any Given Sunday”とも言われる日曜日に行われるので、月曜日は職場やバーなどいたるところがフットボールの話題でもちきりになります。話題の中心はもちろんゲームの内容ですが、他のスポーツなどと共に、フットボールも国歌斉唱とハーフタイム・ショーも話題の一つとなりますが、先日のスーパー・ボウル出場をかけた、ジャイアンツVSサンフランシスコ49ers戦では、ブロードウェイのミュージカル女優としてはとても有名で、これまでにトニー賞とエミー賞を受賞しているクリスティン・チェノウェスが国歌を熱唱して大喝采を浴びていました。この人は、「奥様は魔女」「ピンク・パンサー」などのリバイバル版映画にも出演したり、ロングランを続ける人気ミュージカル「Wicked」でもトニー賞にノミネートされたり、 また以前ご紹介した大人気TV番組「Glee」へのゲスト出演の他、いろいろなテレビ番組にも出演したりと、幅広い活動で今やブロードウェイを代表する人気女優の一人と
も言えますが、その小柄な体からは信じられないようなハリのある豊かな声で歌い上げる素晴らしいシンガーでもあります。
スーパーボウル出場をかけたもう一方の試合、ニュー・イングランド(ボストン)・ペイトリオッツVSボルティモア・レイヴンズ戦では、なんとエアロスミスの、というより今や「アメリカン・アイドル」の審査員として知られるスティーヴン・タイラー(ニューヨーク出身ですが、エアロスミスはボストン出身)が激唱(?)しました。まあ、スティーヴンが国歌を歌えばこうなるとは分かっていたのですが、チェノウェスの正攻法なスタイルとは180度異なる、シャウトとパフォーマンスの入ったスティーヴンの“ロックな”国歌斉唱には賛否両論。しかも歌詞を一箇所間違えたため、メディアを 初め、方々からかなり批判を浴びていました。でも私自身は実はそれよりも彼の声の衰えの方が気になったのです。やはり最近は「アメリカン・アイドル」の方が忙しいのか、そして年齢的な衰えも否めないのか、スタイルは変わらねど、あの強烈なオーラは大分薄れてきているようです。
スティーヴン・タイラーは、実はこれまでにも度々国歌斉唱で“事件”を起こしてきています。地元ボストンのレッドソックス(大リーグ)がワールド・チャンピオンとなった2004年のワールド・シリーズでの国歌斉唱は珍しく(?)無難にこなしましたが、2010年のボストン・ブルーインズ(アイスホッケー)の開幕戦では発音がおかしかったり、途中で間が空きすぎたりで批判を受けました。また、2001年のインディ500のカーレースでは冒頭でブルース・ハープの演奏を取り入れたり、メロディ・ラインをかなりフェイク、アレンジしたり(確かにちょっとやり過ぎだったかも…)、最後は「ホーム・オブ・ザ・ブレイヴ」という歌詞を「ホーム・オブ・ザ・インディアナポリス500」と歌って批判を浴びたりもしました(その場では大受けだったんですが…)。
まあ、保守的なアメリカ人にとっては冒涜にしか思えないのかもしれませんが、今回は同バンドのジョー・ペリーがスティーヴンを過激な言い回しで援護していたのが印象的でした。「国歌てヤツは“ビッチ”さ。オペラ歌手みたいに、国旗を前にして歌詞を寸分違わず同じに歌わなきゃいけないんだ。なんでやりたいように歌っちゃいけないんだ?」、「ちょっと待ってくれよ。スティーヴンはロック・シンガーだぜ。ヤツは自分の持ってるツールを使って歌っただけじゃないか」、「ヤツは唯一無二の声をもったシンガーなんだぜ。彼の国歌斉唱を聴けるだけでもラッキーじゃないか」さすがはジョー・ペリー。ロック魂と反逆精神はまだまだ健在のようです。
今回もまたまたお騒がせ男となってしまったスティーヴン・タイラーですが、アメリカ人は国旗と国歌を本当に誇りに思って大切にするので、ちょっとでも国歌の歌詞を間違ったり、あまりに自己流にアレンジし過ぎたりすると冒涜とされて、とてつもない批判を受けることになります。昨年もクリスティーナ・アギュレラ(スーパー・ボウル)とシンディー・ローパー(テニスのUSオープン女子決勝)が不祥事(?)を起こして見事餌食(?)にされました。二人とも歌詞を間違えたこと自体に関しては弁解の余地はありませんが、クリスティーナは子供の頃から地元のチームでもあった出場チームのピッツバーグ・スティーラーズのために国歌斉唱をしたことがあり、そのスティーラーズのスーパー・ボウルの試合で国歌斉唱するというのは大感激の大イベントでとても緊張した、と後で語っていましたし、シンディの場合はこの日が9.11テロ10周年の前夜であったということで、彼女自身そのことにとても大きな意義を感じ、犠牲者追悼の気持ちも重ね合わせていたので、特別な感情で心が揺れ動いてしまった、と言っていました。そうした特別の状況での緊張・プレッシャーが大物アーティストにも間違いを起こさせたというのは充分に理解・同情できると思うのですが、逆に保守派の人間達にすれば、それだけ大切な日に歌詞を間違えるなどとんでもない!ということになるのでしょう。
とまあ、意見はいろいろとありますが、毎度国歌斉唱にはいろんな事件が起こり、批判や論争が巻き起こるわけですが、アメリカ人達はそれも含めて大イベントでの国歌斉唱を楽しんでいると言えるようです。
さて、そのスーパー・ボウルですが、今年のハーフタイム・ショーは何とマドンナです。エッ?まだ歌えるの?まだ踊れるの?という声が方々から沸き上がっているようですが、「もう彼女は“魔女”の領域だから、そんなことは関係ない。出てくるだけでいい」という意見には、私もなるほどと変に納得してしまいました(笑)。さて、今年のスーパー・ボウルのハーフタイム・ショーはどんな批判や論争が起こるのでしょうか?
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