【I Love NY】2010年はアフリカン・カルチャーに注目
(ここではSTEPのNYスタッフから届く、現地の最新音楽情報の一部をご紹介しています!)
今、ニューヨークのブロードウェイは、リバイバル物とディズニー作品とメイド・インUK作品、そしてハリウッド・スター達による芝居ばかりであると言えます。特にハリウッド・スター達による芝居は、ジュード・ロウの「ハムレット」、キャリー・フィッシャーの「Wishful Drinking」、ダニエル・クレイグとヒュー・ジャクソンの「A Steady Rain」、キャサリン・ジータ・ジョーンズの「A Little Night Music」、リーヴ・シュライバーとスカーレット・ヨハンソンの「橋からの眺め」などが立て続けに公開されており、来年はクリストファー・ウォーケンなども出演の予定です(とは言え、彼等の多くは舞台俳優出身ですが)。
これは言い換えれば、リバイバル物はオリジナルをリアルタイムで知って懐かしみ、しかも金を持っている中高年層を狙うことができ、ディズニー物はチケットのまとめ買いが期待できるファミリー客を狙うことができ、UK物は基本的に出来合いの輸入物ですから様々な面でオリジナル作品よりも金が掛からないし、ハリウッド・スターがブロードウェイの小さなステージに立てば大勢のファンが確実に集まる、という全てが経済的理由によるものとも言えます。
そうした中で、ニューヨークのメディアの評価も高く、メイド・インNYのオリジナル作品として検討しているのは、昨年のトニー賞で作品賞などを受賞した「イン・ザ・ハイツ(In The Heights)」です。これは、マンハッタンに住むスペイン語圏の移民のストーリーで、“ハイツ”というのは、彼等の多くが住むワシントン・ハイツなどマンハッタン北西部の高台(heights)エリアのことです。
「イン・ザ・ハイツ」以外はニューヨークのオリジナル新作ミュージカルが無い、と嘆く
ニューヨーカーが多い中、先日久々にこれぞメイド・インNYと呼べるパワフルでエネルギッシュなミュージカルがスタートしました。題名は「Fela!」アフロ・ビートの創始者と言われ、革新的なミュージシャンであっただけでなく、黒人解放運動をリードして”black president”とも呼ばれたアフリカはナイジェリアのヒーロー、フェラ・クティの人生を題材にしたミュージカルです。
この作品は、実は2008年の秋にオフ・ブロードウェイで公開されて好評を得ていたのですが、同作品に感激したジェイZとウィル・スミス&ジェイダ・ピンケット夫妻がプロデューサー(つまり出資者)となって、オン・ブロードウェイに登場することになったものです。よって、サンクス・ギヴィング・デー前の11月に行われた初日公演には彼等もステージに登場して挨拶し、大変な話題となりました。
音楽を担当するのは、ニューヨークはブルックリン出身のアフロ・ビート系ジャム・バンド(10名以上の大所帯であるため、アフロ・ビート・オーケストラとも呼ばれる)、
アンティバラス。同バンドのリーダーであり、トロンボーン奏者であるアーロン・ジョ
ンソンが音楽監督を務め、同バンドのトランペッター、ジョーダン・マクリーンがア
シスタント・ミュージック・ディレクターを務めています。
アフロ・ビートやアフリカン・アートなどは、既にニューヨークの一部では若者を中心として人気の高いカルチャーの一つと言えますが、そこにジェイZやウィル・スミス夫妻が関わったことにより、今後、音楽、ファッション、アート、インテリア、フードなどを始めとするアフリカン・カルチャーが、新たなムーブメントとして益々注目されていくことと思われます。2010年はアフリカ(南アフリカ)で初めてサッカーのワールドカップが開催されますし、今はマンデラ大統領とスポーツ(ラグビー)を通した南アの人種隔離問題を扱った映画「インビクタス」(クリント・イーストウッド監督、モーガン・フリーマンとマット・デイモン主演)が話題になっています(こちらのメディアでは映画作品としての評価はあまり高くないようですが)。2010年はニューヨークでもアフリカが更に注目されていくことは間違いないようです。
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