【I Love NY】YouTubeが生んだスーパースター
(ここではSTEPのNYスタッフから届く、現地の最新音楽情報の一部をご紹介しています!)
日本では“圧倒的な歌唱力を持ったフツーのおばさん”スーザン・ボイルが
大きな話題を呼んでいたようですが、アメリカでは“圧倒的な歌唱力を持った
フツーの女の子”シャリース(Charice)が数年前から大きな話題を呼んでいます。
スーザン・ドイルとシャリースの共通点は、お互いに歌唱力と風貌に信じられない
ようなギャップがあるということ。
シャリースの場合は、フィリピン出身の小さな(身長150センチちょっと)女の子が、マライや・キャリー、ホイットニー・ヒューストン、セリーヌ・ディオンばりに、
とてつもない声量(こちらでは“ジャイアント・ボイス”などとも呼ばれています)
類い希な表現力をもって見事に歌い上げるのですから、アメリカ人は皆ひっくり返って驚いています。
アメリカでは最近、アメリカン・アイドルなどの“素人のど自慢大会”からスターが続出していますが、シャリースの面白い点はインターネット、具体的にはYouTubeによって生み出された(発掘された)ということです。
YouTubeは、権利関係やコンテンツの規制(セックスや暴力など)にさえ引っかからなければ、基本的に画像・映像・音源などを好き放題にアップロードできます。そして、YouTubeの便利さでもあるのが、サーチ・エンジンと結びつく各コンテンツのタイトルと、タグと呼ばれるキーワード(最近これが外されてしまいました)です。例えば、A子さんがマライアのヒット曲をホームビデオで録画してYouTubeにアップするとします。
その時に曲名と共にマライアの名前をタイトルに加えれば、マライアの映像をサーチしたときにA子さんの映像も引っかかってくるわけです。
シャリースはこの便利さを上手く使って、マライアやホイットニー、セリーヌ・ディオン、マイケル・ジャクソン、ハートなどの大ヒット曲をYouTubeにアップしていました。これが見事にそれぞれのアーティスト達のファンによるサーチに引っかかり、例えばマライアがあるヒット曲を歌った映像のコメント部分に、「マライア最高!でもシャリースって子のバージョンもすごいよ!」といったような寄せ書きがされ、それがみるみると広がって話題となっていったわけです。
デモもそうですが、口コミというのは恐ろしいものです。シャリースの話題はネッ
ト上でどんどん広がっていき、アメリカ有数の資産家・実業家であり、カリスマ的なテレビ司会者&プロデューサーであるオプラ・ウィンフリーの友人がシャリースの映像を見つけ、オプラに伝えたところ、オプラはシャリースに完全にノックアウトされてしまったのです。
シャリースにはもう一つ、オプラを感動させるストーリーがありました。シャリー
スは母親との二人暮らしですが、父親はDV(ドメスティック・バイオレンス)で母親を虐待し続け、母親はその後遺症で働くこともできない状態になってしまったそうです。シャリースは幼い頃から母親に教えてもらった歌(シャリースは正規のボイス・トレーニングやボーカル・レッスンなどは全く受けたことがないそうです)で「私がお金を稼いでお母さんを助ける!」と決心したとのこと。という、ただでさえお涙頂戴のストーリーですが、オプラ自信も幼少の頃、親戚にレイプされるという児童虐待の傷を持っており、同じような境遇の子供達のためのボランティア活動もしています。
そのようなわけで、常に子供に夢とチャンスを与えようと願うオプラは、自分のテ
レビ・ショーで「ワールド・スマーテスト・キッズ」というコーナーを作っているのですが、彼女はシャリースをそこに出演させることにしたのです。そこでホイットニーのヒット曲を歌ったシャリースは、当然のことながら番組の観衆を始め視聴者から大喝采を受けます。そしてオプラは友人でもある大プロデューサー/アレンジャー/作曲家であるデヴィッド・フォスターにシャリースを紹介し、デビューの準備を進めていくことになりました。
こうなるとアメリカン・ドリーム一直線。勢いはもう止まりません。シャリースは
オプラのテレビ・ショーに再び出演した際、オプラの友人であり、あこがれのセリーヌ・ディオンとモニター・スクリーン越しに対面します。そして、シャリースの歌に感激したセリーヌは、ニューヨークのマジソン・スクエア・ガーデンでのコンサートにシャリース母子を招待し、なんとシャリースをステージに上げてデュエットを披露したのです。
その後シャリースは、デヴィッド・フォスターのツアーに参加し、ホイットニーの
代役を務めるなど大フィーチャーされ、スターダム街道をまっしぐらに進んでいき、今年の2月にはシングルを発売。5月には待望のアルバムが全世界発売されて、いよいよ本格的なメジャー・デビューを果たすことになっています。
このようにシャリースに関しては、その歌唱力もデビューへの道のりもすべてが“ありえない”と言えるほどの驚きに満ちあふれています。こんな話は十年に一度というか、めったにあるものではありませんが、その後は「シャリースに続け!」とばかりに、デビュー予備軍またはスターンの卵と言えるような人達によるYouTubeへのコンテンツ・アップロードは益々加熱しているようです。
今や新人発掘はYouTubeから、というのも決して大袈裟ではないようです。