【I LoveNY】月刊紐育音楽通信 October 2015

(ここではSTEPのNYスタッフから届く、現地の最新音楽情報の一部をご紹介しています!)

「月刊紐育音楽通信 October 2015」

 9月のニューヨークは、人の数も警備のレベルも一年間で最大の時期の一つと言えます。
そもそも9月というのは、第一週のレイバー・デイが終わって学校が始まり、仕事も通常通りに
戻り、それと同時に最後の夏休みやピークを外しての夏休みを取る人達も多く、
ビジネスとバケーションが同時進行しながら全てが混み合う時期と言えます。

 ニューヨークの9月のビッグ・イベントとしては、テニスのUSオープンと
ファッション・ウィーク、そして国連総会が代表的ですが、9月と言えば、ニューヨークにとって忘れられないのが911のテロです。よって、この時期になると警戒レベルは一気に上がり、
主要な官公庁や金融関連、そしてランドマークの周辺は物々しい雰囲気となります。
私は普段グランド・セントラル駅を利用しているのですが、この駅はニューヨーク最大の
玄関口と言えますから、テロリストのマンハッタン入りを防ぐため、駅の構内には
警官だけでなく、機関銃を肩に下げた迷彩服姿の州兵達があちこちに配置されています。
先日は何らかのテロ情報が入ったのか、州兵達がいつでも射撃できるようにと銃を構えて
立っていたため、彼等の前を通る時は何とも居心地が悪いものを感じました。
 
 更に今年はローマ法王が来訪したため、警備の規模と度合いは過去最高と言っても良いほど
でした。東京とニューヨークという人混みの中で生まれ育ちながらも、人一倍人混みが苦手な
私は、いつも人混みには近づかず避けているタイプなのですが、先日はローマ法王が
セント・パトリック教会に立ち寄る時間帯に、その周辺にどうしてもいかねばならない
用事があり、ひどい目にあいました。何しろ歩道に人が溢れているだけでなく、五番街の
店舗内、特に2階以上のフロアを持ったガラス窓のある店舗などでは、店内までがローマ法王を
一目見ようという人達に占拠され、店員達までもが持ち場を離れていなくなってしまい、
全てが麻痺している状態でした。しかも、ローマ法王が去って見物人達が帰宅する
タイミングにもぶつかってしまい、地下鉄は東京並のすし詰め状態でした。
 
 ニューヨークの金持ち達は、蒸し暑い夏は避暑地のセカンド・ハウスで過ごし、
厳しい冬はマイアミやカリブに行くというパターンが多いですが、蒸し暑い夏よりも
厳しい冬よりも人混みが苦手な私は、9月こそニューヨークを離れて仕事ができたら
(本当は休めたらベストですが…)といつも思ってしまいます。


トピック:この秋注目の新譜&コンサート
          
 9月はNFL、MLB、NHLという3大スポーツが行われるためにスポーツもたけなわですが、
音楽の方もバケーション時期が終わり、野外のフリー・コンサートも減って屋内へと戻り、
これからクリスマスのホリデイ・シーズンの前までは、人気注目アーティスト達の新作と
ライヴ・コンサートが目白押しであると言えます。

 9月はやはり何と言ってもマジソン・スクエア・ガーデンの2日間連続、その後
ブルックリンのバークリーズ・センターで1日公演を行ったマドンナが話題でしたが、
10月頭に待望のニュー・アルバムをリリースするジャネット・ジャクソンが9月末から
ワールド・ツアーを開始します。と言ってもニューヨーク公演は来年2月の
バークリーズ・センターと、6月の野外シアター、ジョーンズ・ビーチで、
まだマジソン・スクエア・ガーデンは決まっていません。

 その他この秋の新作アルバムは膨大な数のアーティスト達がリリースを控えていますが、
その中でも人気の高いアイドル系の女性シンガー達の新作が巷では話題です。まずは、
ディズニー・チャンネル出身のアイドル・スター、セレーナ・ゴメスが、今や
ドクター・ドレと共にアップル社を呑み込む勢いのジミー・アイオヴァインが設立した
”音楽業界の巨大コンツェルン”インタースコープとの契約後初のアルバムが10月に
発売されるとのことです。

 もう一人、やはりディズニー・チャンネル出身のアイドル・スターで、
セレーナとも親友と言われるデミ・ナヴァート(二人は同い年で、どちらもメキシコ系の
血を引いていますね)がやはり10月にアルバムを発表するとのこと。私自身はこの二人には全く興味はありませんし、ミュージカル界同様、音楽業界もディズニーに振り回されている
ことを憂慮していますが、業界内での盛り上がり(というか盛り上げ方)と注目度は
かなりのものであると言えます。

 子役は大成しない、と言われますが、アメリカでは大成する子役・子供スターが
多いと言えます。ただし、彼等は子供時代に巨万の富を得て、自由にショッピングや
レストランにも行けないような超セレブとなってしまったため、ほとんどが精神的に
不安定になり、ドラッグや酒、奇行に走るパターンが極めて多いと言えます。
しかし、端から見ていると、アメリカ人はこういったタイプが好きなようにも思われます。
栄光と転落、そしてそこから這い上がって得た真の栄光(と言えるのか何とも
わかりませんが…)。セレーナとデミは正にこのシナリオに乗ってひた走り、ファンも業界もそれを喜び、追いかけ、騒いでいる感があります。
 
 ジャスティン・ビーバーも正にこのタイプであると言えますが、11月に発表予定と
言われる彼の新作アルバムは、カニエ・ウェストやドレイクなどが加わっていると言うこともあって、かなり騒がれているようです。

 テイラー・スウィフトとの一件など、常にお騒がせ男のカニエ・ウェストや、ドレイクの
新作もこの秋であると噂されていますが、R&B系での再注目はR.ケリーでしょう。
先日、新作アルバム発売日にバークリーズ・センターでコンサートを行って話題と
なりましたが、彼に対する世間やメディアの評価は極めて高いと言えます。彼も本当に
スキャンダルが絶えず、波瀾万丈の人生を送っていると言えますが、愛とセックス、
信仰と精神性を同時に扱う彼の幅広い作風やアプローチというのは、R&B界、または現在の
アメリカの音楽業界の中でも特殊な存在であると言えますし、単なるシンガーやR&Bスター
というだけではなく、シンプル且つ一度聴いたらいたら忘れられない美しい楽曲
(「I Believe I Can Fly」や、MJの「You Are Not Alone」など)に代表されるように、
類い希な作曲能力も持っている点も、いわゆる巷のR&Bアーティスト達とは異なる
ところです。実際に彼のファンというのも黒人メインというわけではなく、特に最近では
白人のヒップスターの若者達からも注目と称賛を受けているというのは興味深い点です。
先日、彼のインタビューの中で、そのことに対する質問もありましたが、彼は「俺は今現在のために曲を書いたことなんてない。俺が死んだ後も聴いてもらえるように書いているのさ。
それが自分にとってのゴールだし、それがいろんなタイプの人達に聴いてもらえる
理由なんじゃないのかな」とも言っていました。

 10月に新作アルバムを発表するキャリー・アンダーウッドと、出産後活動休止状態で
あったアデルの復帰新作アルバムも、この秋再注目の実力派女性シンガーの新作と
言われています。アデルの方はまだ日程は未定のようですが、10月の発売が決まっている
キャリー・アンダーウッドは、9月にアメリカの人気テレビ・ショーに立て続けに出演し、
すでに精力的にプロモーションを行っていますし、来年早々からワールド・ツアーも
始まるとのことです。アデルも新作アルバム後のツアーは間違いないでしょうし、
この二人が再びこの秋から来年にかけて旋風を巻き起こし、グラミーを争うのも
間違いないと言えるでしょう。

 さて一方、この秋のコンサートに目を移すと、毎年国連総会の前夜祭的イベントとして
行われている「グローバル・シチズン・フェスティヴァル」が今年もセントラル・パークで
行われました。今年の目玉アーティストは、ビヨンセ、パール・ジャム、エド・シーラン、
コールド・プレイ、スティング、コモンなどでしたが、毎年このイベントの規模の
大きさには驚くばかりです。この「グローバル・シチズン」は、「グローバル・
ポヴァティ(貧困)・プロジェクト」というNGO団体を母体としており、2030年までには
世界中の極度の貧困を撲滅することを目的としていますが、単に寄付を集めるだけでなく、
政府や企業や団体に積極的に働きかけ、個人個人に対しても積極的な行動を求めている
非常に興味深い団体です。本稿ではそれを解説するスペースはありませんが、この団体を
誰が動かし、誰から資金を受け、誰を動かしているのかということを知るのは中々
興味深いことであると思います。

 この秋のマジソン・スクエア・ガーデンは、いわゆる超大物ばかりでなく、現在注目の
バンドも続々登場しますが、その代表と言えるのがディスクロージャーと、
ザ・ウィークエンドではないでしょうか。
 しかも、この二つのバンドはアメリカのバンドではないというところも、現在の
アメリカの音楽シーンの動向を表していると言えて興味深いと思います。
 
 ディスクロージャーは、ロンドンの名門インディーであるモシモシ・レコーズから
登場したイギリスはサリー出身のダンス/ハウス・ミュージックの兄弟デュオですが、
アメリカ、そしてニューヨークでも、アメリカではこの手の音楽はヨーロッパに勝てない
というのが今も続いている状況であるようです。

 一方のザ・ウィークエンドは、カナダ出身の男性R&Bシンガーですが、いわゆる巷の
R&Bシンガーと違い、アンビエントやダブ、トリップホップなどを
巧みに取り入れている点が、目新しさであり、特にニューヨークの若者達には
人気の理由となっているようです。

 ニューヨークを代表するコンサート・ホールと言えば、マジソン・スクエア・ガーデンと
バークリーズ・センターなどの他に、ラジオ・シティ・ミュージック・ホールや
ビーコン・シアターなどがありますが、オール・スタンディングのホールと言えば、
歴史的なボールルームであったローズランドが惜しまれて閉館し、レディ・ガガがホールの
最終公演を行いましたが、残った所で言うと、アーヴィング・プラザ、
バワリー・ボールルーム、ウェブスター・ホールなどがあります。この内、
ウェブスターでは、人気TVバラエティ・ショーであるデヴィッド・レターマンの
「レイト・ショー」を引き継いだスティーブン・コルベアの新しい「レイト・ショー」の
音楽監督に大抜擢された、ニューオーリンズ出身でまだ28歳の
シンガー&ピアノ・プレイヤー(マルチ・ミュージシャンと呼ぶべきかもしれません)の
ジョン・バプティストが10月に登場することになり、ニューヨークではかなり話題に
なっています。

 オール・スタンディングのホールに関しては最近、上記老舗ホールよりも、ミッドタウンの西端にあるターミナル5という2003年にできたホール(その後2007年に改装)が
人気&話題となってきました。ここはもともとディスコ全盛期の人気クラブ・エリア
でしたが、ルーフトップに禁煙スペースとバー・スペースを作ってオシャレなホールに
作り替えられました。規模も大きく、前述のバワリーが500人強、アーヴィングが
1000人程、ウェブスターが1500人程というキャパに対して、このターミナル5は
約3000収容という大型ホールとなっています。
 
 よって、マジソンやバークリーズほど巨大ではありませんが、3000人収容の
オールスタンディングということで、このホールはアーティスト達にとって
メジャー・デビュー、またはメジャーの証にもなっており、今やニューヨークを代表する
音楽ヴェニューの一つと言えます。
 
 この秋も、ニューヨーク出身のシンセ・ポップ・デュオ・グループMS MRや、
オーストラリアのバンドTame Impala、トランス&テクノのポール・ヴァン・ダイク
といった人気&注目の旬なアーティスト達がターミナル5に出演する予定です。

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