【MUSIC】sleepy.ab(スリーピー)

メディアコミュニケーション部 杉本です。
季節の変化と共に、聴きたくなる音楽、曲も変わっていく方も多いかと思いますが、
個人的にはこの季節、緯度が高い地域に住むミュージシャンが生み出す音楽が聴きたくなります。北欧、特にアイスランドとか最高ですね。

アイスランドといえば「björk(ビョーク)」や「Sigur Rós(シガー・ロス)」。


「Sigur Rós(シガー・ロス)」のライブは
2016年のFUJI ROCK FESTIVALの来日でも見て、勿論「サイコー!!」だったのですが、
個人的には冬に聴きたいです。
吐く息も白い真冬、静まり返った真夜中に、Sigur Rosを聴く時間は、
冬の楽しみのひとつでもあります。
(今年は暖冬で、関西では吐く息が白いどころか、暖かい気候が続いていますが…)

アイスランドと言えば、シンガーソングライターの「Ásgeir(アウスゲイル)」が
2月7日にNEWアルバム『Bury The Moon』をリリース、久々の来日公演も決定。
5月18日(月)にZepp DiverCity(TOKYO)の東京公演のみですが、気になるところです。

北欧ではありませんが、こういった音色のアーティストとしては、
「Bon Iver(ボン・イヴェール)」も忘れてはいけませんね。彼はアメリカ・ウィスコンシン州出身。
1月に来日公演を行っており、先日授賞式が行われた第62回グラミー賞で
3部門ノミネートされていたのも記憶に新しいところです。

さて、日本で緯度が高い、と言えば北海道ですね。
今日は北海道出身のバンド「sleepy.ab(スリーピー)」、
1月29日にリリースとなった最新アルバム「Fractal」をご紹介します。

sleepy.abは北海道を拠点に活動する3ピース・バンドで、
“眠るための音楽”をテーマに1998年に活動を開始。
繊細な旋律と声、内に向かったリリックとともに作り出すサウント・スケープで、
多くの人達を魅了し続けています。
結成から今もずっと北海道を拠点にしており、
結成20周年を経てもマイペースに、本当にマイペースに(笑)活動中です。

私が彼らの音楽に出会ったのは2006年リリースのアルバム「palette」。
CDショップの店頭でスピッツ草野マサムネさんのコメントともに
展開されているのを見て、視聴してその音世界の虜になりました。

穏やかでありながら、圧倒的な存在感。
冬を想起させる情景や心象風景を様々な角度から美しく描きだす彼らですが、
1月29日に何と7年振りのアルバム「Fractal」がリリースとなりました。

時を経ても色褪せない音像、一音目から「sleepy.ab」だと分かるその気配。
現代的でトリッキーなエレクトリックな要素を織り交ぜながら、
美しさ、危うさ、しなやかさ、それでいて根本にある強さを感じさせ、
待ってて良かったとファン心にも思う素晴らしい作品となっています。

元からのファンの方々は勿論、ポストロック、美しいバンドアンサンブルが好きな方は
ぜひ聴いてみてください。

ワンマンライブツアーも決定しています。
3月1日(日)大阪・梅田Shangri-La
3月15日(日)北海道・札幌cube garden
4月18日(土)東京・代官山UNIT

「sleepy.ab」オフィシャルサイト

(すぎもと)

【Shop In Temma】扇町うどん屋あすろう

私はここ一年ほど,遅めのランチの際に「おうどんいかへん?」とついつい足を運んでしまうお店があります。
元々おうどんがとても好きで,打ち合わせついでに北区豊崎にある「きすけ」に立ち寄ることも多かったのですが,
そこで修行された方が,会社の近くにおうどんやさんをオープン!!なんて幸せ!!
※2019年3月オープンなので,まもなく1年ですが,あったかいおうどんを食べてからレビューしようと思っていたらすっかり季節が過ぎてしまいました。

入口やテーブルのウッド推しなところもオシャレで好きだし,ライティングの感じもなんだか落ち着く!
店内でお子様連れいらっしゃっているお客さんをよく見かけますが,
ベビーチェアに子ども用の食器もあるようで,お子様連れでも配慮は完璧です。
おいしそうにおうどんを口いっぱい頬張っている子どもの顔に,私も癒されています♡

お箸でもちあげるだけでわかるおうどんのモッチリ感。
むにゅーとしながらもしっかりコシを感じる麺。
どうやら小麦粉、卵など厳選した材料で作った麺を一晩寝かせて作られているのだそう。
弊社の香川男児に言わせると,「ちょっとモッチリしすぎかな?」って言ってましたが,
私,関西出身のアラフォー女のココロはガッチリとらえて離しません!

私のオススメは,冷たいおうどんは,
「とり天と鯛ちくわ天の温泉たまごぶっかけ(950円)」,


温かいおうどんは「肉かまたまうどん(950円)」です。


一回ハマると同じものばかり食べてしまう性格のようで,もっぱらここの店はコレ!という感じで
メニューも見ずに注文してしまう日々です。
特に,とり天も鯛ちくわ天もサクサクでして,ちくわ天の概念かわったレベル。
うどんにつかってるのに,天かすがこぼれることなく,しっかり最後まで天ぷらしてくれています。

他には「梅わかめうどん(750円)」「とり天カレーうどん(950円)」「冷・生じょう油(650円)」
「冷・和牛肉おろしぶっかけ(980円)」などなど,とにかくうどんのコシを楽しんでほしいなーと
天満の隅の方から念を送っています。

本当にオススメなのでぜひ一度ご賞味ください。
※お近くの際はお誘いいただければお供します♡

「扇町 うどん屋 あすろう」
住所 : 大阪市北区天神橋3-8-3
営業時間 : 11:00~16:00
定休日 : 木曜日・第2・4水曜日
客席 : カウンター4席、テーブル14席


(おおた)

「月刊紐育音楽通信 February 2020」

(本記事は弊社のニューヨーク支社のSam Kawaより本場の情報をお届けしています)

Sam Kawa(サム・カワ) 1980年代より自分自身の音楽活動と共に、音楽教則ソフトの企画・制作、音楽アーティストのマネージメント、音楽&映像プロダクションの企画・制作並びにコーディネーション、音楽分野の連載コラムやインタビュー記事の執筆などに携わる。 2008年からはゴスペル教会のチャーチ・ミュージシャン(サックス)/音楽監督も務めると共に、メタル・ベーシストとしても活動中。 最も敬愛する音楽はJ.S.バッハ。ヴィーガンであり動物愛護運動活動家でもある。

できればニュースレターのイントロは明るくいきたいものです。しかし、今月も「悲劇」がそれを許してくれませんでした。スーパー・アスリート、コービー・ブライアント41歳のヘリコプター事故死です。
しかも13歳の娘も一緒の事故死はあまりに悲惨です。

彼の名前Kobeが「神戸」から来ていること、そしてコービー初来日の際に彼は阪神大震災からまだ3年少しの神戸に訪れて寄付を行っていることなどは、私よりも日本の皆さんの方がよくご存じでしょう。

個人的には、学生時代はバスケットボール選手で今はブルックリンの大学でアスレチック部門のディレクターを務めている私の息子にとってコービーはヒーローでしたので、コービーの試合がニューヨークである時は必ずと言って良いほど小さな息子を連れてゲームを観に行っていたことが忘れられません。

史上最強の攻撃力を持つと言われるあのレブロン・ジェイムズをして「コービーの攻撃力は欠点がゼロだ」と言わしめたコービーの“芸術的な”攻撃力(特に相手の動きを翻弄し封じてしまう彼の動き)。
コービーの師匠である名将フィル・ジャクソンをして「最も確率の低いシュートを決められる最高の選手」と言わしめたコービーのこれまた“芸術的な”シュート。本当に彼のプレイはスポーツとはあまり縁のない音楽人間の自分にとって「アート」でもありました。

かつては不倫・レイプ騒動や離婚騒動もあり、決して優等生であったわけではないコービーでしたが、両腕に妻と娘達の名前のタトゥーを入れ、特に4人の娘思いの良きパパであり、引退後はスポーツ界、特にバスケにおける女性の地位向上や進出をサポートするための事業を立ち上げていたことは、あまり知られていないかもしれません。

そんな矢先の事故死は、悔やんでも悔やみきれませんが、コービーの遺志は必ず誰かが継いでいくことでしょう。私自身まだ動揺が続いて文章もまとまりませんが、全てにおいて傑出していた偉大なアスリート、コービーの冥福を祈りたいと思います。合掌。

 

トピック:スキャンダルと悲劇と18歳。“大揺れ”の2020年グラミー賞

もはやグラミー賞が音楽界を代表するイベントなどではなく、音楽界を占うイベントでもないということは、これまでにもいろいろな角度からお話してきました。レコーディング・アカデミー(レコード協会とは別)なる、極めて政治的・権力主義的な組織によって運営され、アカデミー賞やエミー賞などに対抗する音楽界最高の賞と謳いながらも、同組織の会員のみによる秘密投票によって賞が決まるグラミー賞が、音楽の現場または音楽市場を正確に反映した賞とは言えないことは明らかです。ですが、音楽ビジネスにおける同賞の“権威”というのはやはり今も絶大であり、音楽市場とまではいかなくても“音楽世相”というものを反映したものであることは確かであると言えるでしょう。

そんな辛口の意見を述べてはいても、私自身、毎年賞の動きが気になってしまうことは否定できませんが、今年は賞の直前(10日前)にレコーディング・アカデミーの社長&CEOの解任という驚愕の事件が起き、今まで以上に注視せざるを得ませんでした。

この問題ですが、解任されたのは昨年8月に同職に就任したばかりのデボラ・デューガンで、同アカデミーの運営方法やグラミー賞の選考傾向のみならず、女性に対して差別的と取られる発言などによって批判の嵐にさらされていた前社長&CEOのニール・ポートナウの後を受け、レコーディング・アカデミー史上初の女性社長&CEOとして大抜擢されたばかりでした。それが、わずか5か月程での解任というのは穏やかではありません。

レコーディング・アカデミー側の主張によれば、デューガンが“不正行為”を行ったための解任とされていますが、これはデューガンのアシスタントからの申し立てによるものらしく、平たく言えば、デューガンによる彼女のアシスタントへの「パワハラ」であるとのことですが、その内容については「現在調査中」という、何とも歯切れの悪いコメントを発表しています。それでいてデューガンが「情報漏洩」と「誤情報」も企てたとして、その隠蔽のためにレコーディング・アカデミーに対して多額の請求を行ったということにも言及しているようです。

解雇された当のデューガンも黙ってはいません、彼女はまずレコーディング・アカデミー側のコメントに対する反論として、“被害者”であるという自分のアシスタントに対する「パワハラ」を完全に否定しており、そもそもこのアシスタントが彼女の前任者ポートナウの“子飼い”のベテラン管理職スタッフであったということ、そしてこのアシスタントがパワハラ告発後、休暇を取って居所もわからないままであるということも明かしました。

デューガンの反論でショッキングなのは、デューガン自身は組織改革のために動き始めた矢先に解雇された、と主張していることです。具体的にはレコーディング・アカデミーの人事部に対し、同アカデミー内の様々な問題や苦情を詳細なメモにして提出した約3週間後の解雇であったとのことですが、デューガン自身が語ったメモの告発内容はかなり強烈なものと言えます。

まずは、デューガンの前任者ポートナウのアーティストに対するセクハラ/レイプ疑惑、そして、同アカデミーの法務顧問からの彼女自身に対するセクハラ行為、更に驚くべきは(私自身はあまり驚きませんが…)グラミー賞の指名システム/プロセスの不透明性と不正行為(賞候補は1万2千人の同アカデミー会員によって投票され、更に同アカデミーの「秘密委員会」によって上位20が審査・選択される)、そうした不正行為によって過去にエド・シーランとアリアナ・グランデの賞ノミネートと受賞が仕立て上げられたこと、などを報告したというのです。

これだけの内容であれば、例えそれらが真実であったとしても、または逆に虚偽であったとしても、同アカデミーとしてはそのような報告をする人物を社長&CEOに留めておくことはできないと言えますし、当のデューガンとしても、この体当たり戦術は当然のことながら解雇覚悟のことであったと思われます。しかもデューガンは解雇の一週間後にはアメリカの人気テレビ番組に出演して上記のことを暴露し、弁護士チームを結成してレコーディング・アカデミーと真っ向から対決する姿勢を示しているので、その度胸については大したものであると言えます。

当然のことながらレコーディング・アカデミーの方は、デューガンの主張は事実無根と相手にもしていないようですが、そうは言っても相手は単なる一従業員ではなく、例え5か月間であっても社長&CEO職にあった人間です。それを晴れのグラミー賞授賞式の僅か10日前に解雇するというのは余程のことであり、尋常なことではありませんし、メディアや音楽業界のみならず、同アカデミー内つまり会員達の動揺は極めて大きく、同アカデミーとしては騒ぎの鎮静化に必死のようです。

暫定で社長&CEOに就任したのは、デューガンの社長&CEO就任の約2か月前に、同アカデミーの議長に就任していたハーヴィー・メイソンJr.。ジャズ・フュージョン関係に詳しい方ならすぐにおわかりのように、偉大なドラマー、ハーヴィー・メイソンの息子です。

まずレコーディング・アカデミーは自分達の会員向けに、暫定措置としてデューガンの代わりにこのメイソンJr.の社長&CEO起用を伝え、同アカデミーと会員との変わらぬ信頼関係を強調するレターを送りました。それに続いて今度は同アカデミーの女性役員が会員達に、同アカデミーの女性スタッフ達が男性スタッフ達と協力し、いかに同アカデミーの多様性を進歩させてきたかを説明するレターを送り、更に今度はメイソンJr.自身が会員達に向けて、グラミー賞選考システムの透明性、指名審査委員会の多様性、利益相反を防止するための規則、および委員の名前の機密性などを強調するレターを送りました。

更にメイソンJr.は同アカデミーの変革のための具体案と計画を会員達に伝えましたが、デューガンに言わせればそれらは全てデューガンが社長&CEO就任後に彼女の指示の下で合意されたものであるとのことで、デューガン自身のアイディアを自分のアイディアにすり替えているメイソンJr.の対応についても批判しています。

 

デューガンと彼女の弁護士チームは、メイソンJr.がディーガンのアイディアをコピーしただけという具体案のみならず、レコーディング・アカデミー会員から独立した専門委員会と委員長の設置、同アカデミーにおける個人間や理事会内の取引や公的非営利資金の使用に関する真に独立した調査、グラミー賞候補上位20を審査・選択する「秘密委員会」の廃止、そしてデューガンの社長&CEO復帰を求めてアクションを起こしていますが、デューガンの主張の基盤は、やはり白人メインの男性社会(ちなみに、暫定新社長&CEOのメイソンJr.はアフリカ系アメリカ人)による同アカデミーの差別意識の撤廃と腐敗の一掃にあり、そして賞選考の透明性を最重要課題として捉えており、先日のテレビ出演でもそのようなことを力説していました。

現時点でディーガン側とレコーディング・アカデミー側双方の主張や事の真相を裏付ける証拠はまだ充分ではなく、正しい判断ができる段階にはありませんし、この後裁判闘争となれば時間の掛かる話となる可能性も高いと言えます。

また、今回のスキャンダルが、映画界のハーヴィー・ワインスタイン・スキャンダルと共に最近の#Mee Tooムーブメントと連動してくかという可能性もまだ未知数であると思いますが、少なくともグラミー史上最大のスキャンダルであることだけは間違いないと言えるでしょう。

そうした“嵐”の中で行われた今年のグラミー賞でしたが、今回は更にイントロでもお伝えしたようにコービー・ブライアントの事故死をいう悲劇が重くのしかかりました。なにしろコービーが事故死したのはグラミー賞当日の朝でしたし、グラミー賞の会場であるロサンゼルスのステイプルズ・センターは、コービーが在籍したロサンゼルス・レイカーズの本拠地でもあるわけです。

今回のグラミー賞のパフォーマンスにおいて、アリシア・キーズがこのステイプルズ・センターを「コービーが建てた」という言い方をしていましたが、確かにこのステイプルズ・センターはコービーのレイカーズ入団(1996年)後、シャキール・オニールとのコンビによって新しい黄金時代を迎えたレイカーズの人気・躍進によって1999年にオープンしたアリーナです。

しかも、オープンしたその年のシーズンからシカゴ・ブルズで3連覇を二度成し遂げた名将フィル・ジャクソンを迎えて新たな3連覇(つまりブルズ~レイカーズだと通算6連覇!)を成し遂げたわけで、その意味でもチームの主戦力であった「コービーが建てた」というのは決して過言ではないと言えます。

そうした背景もあって、コービー事故死の当日におけるこのアリーナでの授賞式やパフォーマンスというのは、アーティスト達にとってはあまりにエモーショナルで重い試練でもあると言えました。

上記のいきさつや背景を全て抜きにすれば、今回のグラミー賞はビリー・アイリッシュという18歳の少女が最年少でグラミー5部門(年間最優秀アルバム賞、年間最優秀レコード賞、年間最優秀楽曲賞、最優秀新人賞、年間最優秀ポップ・ボーカル・アルバム賞)を制覇したことが歴史を塗り替える快挙と言えました。

特に主要4部門(アルバム、レコード、楽曲、新人)の制覇というのは81年のクリストファー・クロス以来ということで、それが女性で最年少ということは長いグラミー賞の歴史においても、また音楽業界にとっても大事件であると言えます。

しかし、前述のもう一つの大事件の後では彼女の受賞にも一部で疑問が生まれています。つまり、レコーディング・アカデミー、そしてグラミー賞の存続にも影響しかねない今回の大スキャンダルから世間の目をそらすために、レコーディング・アカデミーは誰もが驚く受賞劇を仕立て上げ、更に、結果的にコービーの悲劇も利用した、というわけです。

これは受賞したアイリッシュや彼女のファン達にはあまりに酷で心ない意見・見方であると言えますし、不慮の死を遂げたコービーに対しても無礼な話です。私自身もそこまでネガティヴに物事を捉えることには賛同できませんが、それでもレコーディング・アカデミーに関してはあまりにネガティヴで不透明なことを多く、しかもその極めつけが今回の女性新社長&CEOの解任劇という結果になっているため、全てに疑いが生じてしまうという厳しい状況にあるとも言えます。

確かにアイリッシュの音楽や歌に関してはかなりの賛否両論があり、好き嫌いもはっきりと分かれます。自分のプライヴェート部分をさらけ出し、悩みや不安、特異性やコンプレックスなども一つのコミュニケーション・ツールにして同世代からの圧倒的な共感を得ている彼女の歌には、逆に言えば世代による拒否感や分裂、普遍性の欠如といった部分も存在します。しかも、グラミーでこれだけの賞を独占受賞したことには、やっかみや疑問視する意見もあると思いますが、それでも2019年のアメリカ音楽界において、アイリッシュの音楽が起こした旋風は間違いなく一つの大きな“現象”でした。

何しろ、彼女のデビュー・アルバムはメジャーなレコード会社からではなく、SoundCloudというベルリンを拠点とする音楽ファイル共有サービスからの自費リリースでしたし、アイリッシュの音楽パートナーとして作編曲、レコーディング、プロデュースを手掛ける兄のフィニアス・オコネルとの音楽制作は、今回の受賞作を始め、基本的に彼らの自室(寝室)を拠点としています。つまり、近年レコーディング・プロダクション自体がすっかり変革してきている中で、この兄妹のプロダクションというのは“宅録”という、ある意味で究極の低コスト・プライベート・プロダクションを実現しているわけです。

そのオコナルは受賞の際に「最も創造的になれるのは最もリラックスできる場所(自室)」と語り、「“手作りクッキー”でグラミー賞がもらえたのはとても光栄」とも述べていたのは非常に印象的でした。

彼らの受賞は特にこれから音楽を目指す少年・少女たちに対して、強烈なアピール/インパクトとなっていると言えます。それは、お金もプロ仕様の楽器も機材もスタジオもいらず、自分のベッドルームでくつろぎながら、手頃な値段で手に入る機材を使って音楽制作を行い、しかもグラミー賞を受賞することだって可能、という意識改革を引き起こしたとも言えるわけです。

アイリッシュは受賞のスピーチでは「グラミー賞についてはいろいろとジョークを言ったけど、今は心から感謝したい」と語っていましたが、「批判」とは言わず「ジョーク」というのは彼女らしいかわいい言い方であると思います。ですが、正確にはアイリッシュはグラミー賞自体をジョークだとも言っており、彼女にとってはグラミー賞などどうでも良い存在であったと言えるわけで、そんな彼女がグラミー賞を制したというのは最高のジョークであるとも言えます。

相変わらずダボダボの服で授賞のステージに立ったアイリッシュですが、今回の授賞式でも、相変わらず熱唱と感涙の圧倒的なパフォーマンスが披露され、パフォーマーも出席者も、女性達は自分達の考える女性らしさをアピールする思い思いの衣装で登場していました。そんな中でダボダボ服に虚ろ気な眼差しとシニカルな笑顔をたたえて戸惑いを見せながらも常に淡々としているアイリッシュの存在は、ユニークというか超異色というか、とにかく際立っていたと言えます。

ショーアップされた豪華絢爛さの中でも自分を失わず偽らず貫き通す頼もしさ。

そんな意味で彼女の受賞は、ベッドルームからそのまま飛び出したような自然体のアンチテーゼによって、グラミーの改善・改革を気付かぬうちに既に実現してしまっているとも言えるのかもしれません。

★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
今月もお読みいただきありがとうございました。
次の配信は3月上旬の予定です。

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【STEP INFO】令和2年のスタート

明けましておめでとうございます。
今年もどうぞよろしくお願い致します。
 
いよいよ今年はオリンピックイヤーですね。
第32回オリンピック競技大会は7月24日から8月9日までで33競技、
東京2020パラピンピック競技大会は8月25日から9月6日までで22競技が
行われます。

思い起こせば、2013年9月8日、当時のIOC会長ジャック・ロゲ氏が
手元のカードをくるりと返し、「ト-キョ」と開催都市を発表したのが
もう遠い昔のことのよう…?いやいやまるで昨日のことのよう…?
いずれにしても新年を迎え、改めて時代がどんどん進んでいくことを
感じずにはいられません。

弊社は昨年、東京渋谷に新たにスタジオをオープンしました。
今年も時代の流れに乗れるよう、いや一歩先取りできるよう
邁進してまいりますので何卒よろしくお願いいたします。

それでは今年初のメルマガ、スタートです。

            (フクイ)

【MUSIC】FAITH

2020年の一発目を担当させていただきます
メディアコミュニケーション部の門脇です!!

2019年も何組か気になるアーティストに出会いましたが、
2020年個人的に注目しているのは「FAITH」というバンドです!!

メンバー5人のうち3人がハーフ!!今年メンバー全員が20歳という若さ!!
そして数多くの素晴らしいアーティストが在籍するオフィスオーガスタ所属で、
出身は「信州そば発祥の地」という長野県の伊那市。

音楽性はキャッチーで、POPで聴いていて元気が出る!!

何度かライブも見ましたが、本当に楽しそうに演奏するんです!!
自然と笑顔になるような!!

1月15日にメジャーデビューアルバム『Capture it』でメジャーデビューするんですが、
これまでのキャッチーさ、POPさに加え10代ならではの葛藤、不満、
不安を描いた楽曲などもあり新たな「FAITH」の一面を感じました。

ボーカルのアカリ・ドリチュラーさんはモデルとしても活動!!
国境も世代も超えて愛させる存在になっていくのではと思っています。
ぜひLIVEに足を運んで欲しいです!!

(門脇)

【Shop in Azabu】川上庵

皆様、あけましておめでとうございます。
今年一番にご紹介させていただくのは、麻布スタジオから徒歩5分の所にある「麻布 川上庵」です。

蕎麦をメインとした和食ダイニング。
ランチ、コースもあります。

こんな素敵なお店を、過去のメルマガでご紹介してなかったというのが不思議でなりません。

のれんをくぐると、地下へと降りる階段があり、
右写真の奥に見える扉の向こうがお店です。
佇まいからして、すでにお洒落な空気が漂っています。

       

「かけそば(920円+税)」をはじめとする、様々な種類の蕎麦をランチタイムでも食べることができますが、
今回は奮発して昼のコース(1,800円+税)を注文してみました!

4種の前菜は左から、
豆腐の醤油豆味噌、蒸し鶏の鬼おろし餡、鯵の南蛮漬け、金目鯛のカルパッチョです。

コースの蕎麦は、かけ・せいろ・クルミだれせいろ・おろしから選べます。
川上庵の名物は「クルミだれせいろ」という事でこちらをチョイス。

「クルミだれせいろ」はその名の通り、濃厚なつけダレにクルミが入っています。
細すぎず、太すぎず、丁度良い二八蕎麦と、このクリーミーなタレが良く絡み、口の中いっぱいに満たされます。

最後のデザートの杏仁豆腐もおいしくいただきました。
お昼からなんとも贅沢な気分になれる、川上庵ランチコースのご紹介でした。

そして一緒に行ったスタッフは「かき揚げ天丼と一口そば(1,500+税)」を注文しました。
王冠のような~という表現がぴったりかもしれません!
かき揚丼と蕎麦、どちらも楽しめるよくばりメニューです。
お昼からガッツリいきたい方は是非。

夜にも伺ったことがありますが、蕎麦はもちろん、一品料理もどれも美味かったです。
お酒の種類も豊富で、料理に合わせてお酒をチョイスできるところも魅力的です。
そしてなんと
朝4:30まで営業していますので、
お蕎麦屋さんでは珍しい、とことん(!)楽しめてしまうお店でもあります。

「川上庵」で検索したら、あの世界のグルメ(!?)渡部さんも
イチオシのお店としてブログで紹介しており、
あたたかい「鴨煮込み蕎麦」も絶品なんだとか。

テーブル席とカウンター席、そしてペット可のテラス席、合わせて50席程あるようです。
年中通して楽しめるお蕎麦、
麻布十番に来た際は是非。

麻布 川上庵
【住所】東京都港区麻布十番 3-5-7 B1階
東京メトロ南北線、都営大江戸線「麻布十番駅」1番出口より徒歩2分
【営業時間】11:30~4:30 (3:30 LO)  (ランチメニューの提供は11:30~17:00)
【定休日】なし
【予約・お問い合わせ】 ‎03-5439-5757

(山中)

【月刊紐育音楽通信 January 2020】

(本記事は弊社のニューヨーク支社のSam Kawaより本場の情報をお届けしています)

 Sam Kawa(サム・カワ) 1980年代より自分自身の音楽活動と共に、音楽教則ソフトの企画・制作、音楽アーティストのマネージメント、音楽&映像プロダクションの企画・制作並びにコーディネーション、音楽分野の連載コラムやインタビュー記事の執筆などに携わる。 2008年からはゴスペル教会のチャーチ・ミュージシャン(サックス)/音楽監督も務めると共に、メタル・ベーシストとしても活動中。 最も敬愛する音楽はJ.S.バッハ。ヴィーガンであり動物愛護運動活動家でもある。

                     


 いよいよ時代は「20年代」に突入しました。10年単位で時代を切る言い方は90年代(1990年代)までは一般的でしたが、21世紀という新しいミレミアムを迎えて「00年代」、「10年代」という言い方は今一つしっくりとこなかったようですし、一般的に浸透しませんでした。「20年代」と言うと、まだまだ1920年代を彷彿とさせるものがありますが、私のような古い時代の人間でも、20年代の記憶やリアリティというものは持ち合わせていませんし、今後は新しい“20年代”、“30年代”という言い方が普及していくと思われます。

 しかし、アメリカでは既に10年単位で時代を語る感覚は、特に若い人達の間では薄らいでいると言われます。それは時代の進み方が20世紀とは桁違いに速く、10年で時代をくくる捉え方自体にリアリティがないため、と様々なメディアや論者は語っています。
 私自身にとっては、特に「60年代」と「70年代」というのは強烈なインパクトと記憶、そしてリアリティが今でもあると言えますが、確かに「00年代」や「10年代」というくくりは言葉の響きだけでなく、実際にもほとんどリアリティは感じられませんでしたし、「20年代」という言い方も言葉の響きとしては少々親近感も感じられますが、激動の時代の只中にいると、10年単位というくくりには、もうリアリティが感じられなくなっています。

 それよりも、やはり「2020年」という言葉と響きには、アメリカにおいても日本においても、期待と不安が入り乱れた様々な思いが交錯し、多くの人々にそれなりのリアリティと、それなりの影響を与えているのではないでしょうか。
 日本は何と言ってもオリンピックの年ですし、昨年「令和」という新しい時代を迎えて何かしらの期待感や明るさも漂っているのではないかと思われますが、アメリカにおいてははっきり言って“真っ暗”と言っても良い状況であると感じます(笑)。何しろ、その結果の行方は別として「大統領弾劾」という大事件(快挙?)が起きたまま突入した2020年です(アメリカにおける「大統領」という存在の大きさは「首相」の比ではなく、それは“敬意を集める国のリーダー”であり、国の「最高指揮官・司令官」であり、ある種「国王」にも通じる絶対性をも有しています)。
 更に今年の大統領選挙はトランプ再選が濃厚と言われることによる期待感(トランプ支持者側)と絶望感(反トランプ側)の完全な二分化を引き起こしていますし(もっとも、4年前は“まさかの”トランプ当選となりましたので、今回は逆の“まさか”が起こる可能性もゼロではないと言えます)、失業率は近年最低で雇用率は上がり景気も良いなどとメディアは伝えますが、富裕層にはリアリティがあっても、ミドルクラス以下には全くといって良いほどリアリティの無い不透明・不確実な状況が続いていると言えます。
 また、その理解・解釈によって対立が続く環境問題は、現実的には自然災害が激増する更に深刻な状況を迎えてきていますし、最近は他のニュースに振り回されて取り上げられる機会が減っている移民問題は実は全く好転しないどころか益々憂慮すべき事態を迎えています。

 そして実はこれがアメリカ(のみならず全世界)にとって2020年最大のリスクとなる可能性が高いと言われる中国との問題は、香港と台湾との問題も絡めて益々ヒステリックな状況となっていますし、それ以外にも問題は山ほどあって、四方八方に“暗く巨大な壁”が横たわっていると言えます。
 そんな状況ですから、暗く不安なニュースに振り回されていては、それだけで一日が終わってしまいますし、何も前に進みません。社会意識の低い人達は、景気が良くなっている(と言われている)のだからエンジョイすれば良いではないかと様々な問題に対して益々無関心となっていますが、逆に社会意識の強い人達の中にも「無関心」・「無視」というスタンスは徐々に広がり始めているとも言われています。
 これは、ここまでどん詰まりの状況になると、参加することやプロテストすることでは何も解決しないので、「無関心」と「無視」を徹底させて、ある種のボイコット運動や意識改革に発展させようという解釈や試みとも言われていますが、果たしてその行方はいかに、といったところでしょうか。

 いずれにせよ、2020年は“和”の意識は益々薄れ、良い意味でも悪い意味でも“身勝手さ”が益々強くなっていくのは確かかもしれません。
 新年早々、先行きの不安ばかりですが、どちらにどう転ぼうとも、皆さんのご健康と ご活躍を祈り、Happy 2020!


トピック:“神聖不可侵”のクリスマス・ソング

 遅ればせながらの話題ではありますが、2019年、皆さんはどんなクリスマスを過ごされたでしょうか。チャーチ・ミュージシャンとしても活動する自分としては、この時期は大変忙しく、また心温まる季節でもあるのですが、普段の生活レベルで言えば、クリスマス・シーズンはいかに人混みを避けるか、というのが課題の一つでもあります。  
 この時期にニューヨークに来られたことのある人には言わずもがなですが、マンハッタンの中心部というのは本当にまともに移動することもできない、観光客と買い物客でごった返した“人混みの嵐”となります。そんな人混みを見学して楽しむ観光客の人達は良いですが、日々の仕事に追われ、時間に追われている人間にとってはたまったものではありません。まあこの時期に仕事をしなければならないというのが哀れというか悲しむべき状況とも言えますし、本当は長期休暇を取って暖かい場所で過ごすのが理想ではあるのですが…。

 といった愚痴はさておき、今年のアメリカ音楽業界では、クリスマスは久々にいろいろな話題がありました。まずは、既に“クリスマス・シンガー”または“ホリデー・シーズン・シンガー”とのレッテルを貼られつつあるマライア・キャリーです。マライアは2014年から、彼女としては小規模なホールと言える、マンハッタンはアッパー・ウェストにあるビーコン・シアターでのクリスマス・コンサートが相変わらずソールドアウトで、この時期は毎年話題となりますが、今年は彼女の代表曲の一つと言える「恋人達のクリスマス(原題は「All I Want for Christmas Is You」ですから「クリスマスに欲しいのはあなただけ」といったところでしょうか)が、なんと25年という長い歳月を経て、アメリカで最も権威あるチャートとされるビルボードのHot 100でナンバー・ワンになるという出来事がありました。ちなみに今回晴れてナンバー・ワンとなったのは、本人によるニュー・リミックス/ニュー・アレンジでもなく、1994年にリリースされたオリジナル曲そのものそのままです。

 チャートのナンバー・ワンに到達するまでに長い時間がかかった曲というのはこれまでにもたくさんありました。しかし、25年というのは何とも気の長いというか気の遠くなるような話であり、快挙と言えば快挙ですし、話題性としても充分と言えました。
 実はそれよりも、今回の同曲のナンバー・ワンによって、マライアの同チャートでのナンバー・ワン曲数は計19曲となり、未来永劫記録が塗り替えられることはないであろうと思われていたビートルズの20曲に、あと1曲と迫る結果となったことの方が間違いなく快挙であると言われています。

 ちなみに、マライアと共に計18曲のナンバー・ワン曲を誇っていたアーティストにはエルヴィス・プレスリーとダイアナ・ロスがいます。ですが、プレスリーの場合は18曲中半数以上がHot 100というチャートが始まった1957年以前の別チャートによるナンバー・ワンであるため、それらを加算して18曲とすることには異論もあります。
 一方、ダイアナ・ロスに関してはソロ活動前のスプリームス(発音的には「サプリームス」に近いですし、「シュープリームス」では英語として全く通じません)のナンバー・ワン曲も含めての18曲ですから(更にはライオネル・リッチーとの共作/デュエット曲もあり)、こちらもやはり異論のあるところです。

 これに対してマライアの場合は解釈的にも異論の無い19曲と言えますし、しかも一応まだバリバリの現役ですから、今後ナンバー・ワン曲を送り出して、ビートルズと並び、更にはビートルズを上回る可能性も残されています。
 ですが、音楽業界では“神聖不可侵”とも言えるビートルズですし、アメリカの音楽業界においても、既に少数とはなっていながらも、ビートルズ世代というのは長老・重鎮クラスにまだ残っています。よって、これはビートルズ・ファンのみならず、音楽業界内としても、あまり諸手を挙げて歓迎・祝福できる愉快で喜ばしい話とは言えないようです。

 そもそもマライアは、今回のチャート・ナンバー・ワン達成の前から、この自分自身の名曲の“広報宣伝”活動を活発に展開していました。テレビ・メディアへの出演、クリスマスやホリデイ・シーズン絡みの様々なイベントへの出演、そして極めつけは同曲の新ミュージック・ビデオの発表です。
 ご存じの方も多いでしょうが、同曲は1984年のリリースと共に2つのオフィシャル・ミュージック・ビデオが発表されました(その他にもリミックス・バージョンでのビデオや、ジャスティン・ビーバーとのデュエット時のビデオ等もありますが)。どちらもマライア自身のディレクションによる作品でしたが、特に最初のビデオは当時マライアが結婚していた元ソニー・ミュージック(元CBSレコード)のCEOとしてアメリカ音楽業界の帝王の一人(カサブランソニー・ミュージック・エンターテイメントを)と言われるトニー・モトーラもサンタクロース役で出演するホーム・ビデオ風の作りで、今のマライアにとってはあまり嬉しくない作品であると言われていました。

 ですから、同曲のリリース25周年として全く新しいミュージック・ビデオをリリースした意図は充分理解できますし、そのビデオ作品に続いて様々なメディアやイベントに出演して大々的なパブリシティを行ったのも当然と言えば当然です。ですが、その結果として25年後に同曲がナンバー・ワンに輝くというのは、あまりにもできすぎた話であり、できすぎたお膳立てである、というわけで、そうした中で今回の同チャート・ナンバー・ワンに対する不信・疑惑もささやかれました。

 今や大スター中の大スターであり、アメリカ音楽界における“女王様”として君臨し、誰も彼女に口を挟めるものはいないと言われ、音楽界における“トランプ級”の存在でもあるマライアですし、“豪腕”で知られるマライアと彼女のプロダクション・チームが巧みにメディア操作/チャート操作を行ったとしても何の不思議はありません。
 そもそもメディア操作というのは、今の音楽・芸能界のパブリシティにおける一つの手段ですし、ビジネス上のアドバンテージや金の動きといった部分を除けば、今やチャート自体の権威というものが完全に失墜している状況で、チャートの信頼性・信憑性をどうこう論議しても、それは大した意味もなく、やっかみにも聞こえがちです。
 実は同曲は昨年もクリスマス時期に同チャートで3位まで上昇したという経緯・伏線もありました。そのため、毎年この時期になるとチャートで上昇するこの名曲を、25年という節目を利用して一気にナンバー・ワンに上り詰めることを実現したマライア陣営の“戦略・手腕”は、実に見事であったと言うべきでしょう。

 クリスマス・ソングと言えば昨年と今年、もう一つ興味深い動きがありました。それは既存のクリスマス・ソングの名曲の放送禁止という措置です。
 具体的には昨年は「ベイビー、イッツ・コールド・アウトサイド」、そして今年は「イッツ・ビギニング・トゥ・ルック・ア・ロット・ライク・クリスマス」というクリスマス・シーズンには欠かせない代表的な名曲が立て続けに放送禁止となりました。
 ただし、放送禁止と言っても、現在はかつてのラジオ黄金時代とは違い、音楽が様々なメディアを通して流され、聴かれている世の中ですので、いわゆる全面放送禁止というわけではあいません。
 今の時代は放送に関しては、メディア・ブロードキャスティング・カンパニーという存在が、契約を結んでいる様々なメディアの企業・組織に対して音楽を供給するという形態が一般的になっていますが、今年の場合は、その大手メディア・ブロードキャスティング・カンパニーの一つであるMood Musicという会社が「イッツ・ビギニング・トゥ・ルック・ア・ロット・ライク・クリスマス」の放送禁止を発表しました。
 その結果、Mood Musicと契約しているストリーミング(パンドラ)、大型店舗(ターゲット)、ホテル(マリオット、ヒルトン、ハイアット)といった企業・組織に対しては同曲が供給されなくなり、それらを通しては同曲を耳にすることはできなくなったというわけです。

 このMood Musicは、2011年にケーブル・ラジオやインターネット・ラジオを通して商業ユースの音楽供給企業として歴史のあるMuzakを買収したことで知られています。  
1930年代のラジオ黄金時代において急成長したMuzakは、間もなくしてワーナー・ブラザーズに買収され、その後もオリジナル・コンテンツやテクノロジーの分野で発展し続けましたが、2009年に破産申請して2010年に倒産。その後、Mood Musicに買収されたという経緯を持ってます。
 ですが、商業ユースの音楽ビジネスにおいては長い歴史と豊富な経験・実績を持っており、それを受け継いだMood Musicは、上記のように大型企業に対する商業ユース音楽供給において巨大なシェアを誇っているので、その影響力は決して小さくはありません。

 今回、「イッツ・ビギニング・トゥ・ルック・ア・ロット・ライク・クリスマス」が放送禁止となった理由は、歌詞の中に「ピストル」という言葉が入っていたためでした。 
 トランプ政権下の政府や社会一般の動きとは全く逆に、リベラルなスタンスが際立ち、銃規制にも積極的である音楽業界サイドから、例えクリスマスの名曲であっても歌詞において銃を肯定的に扱う歌は放送を禁止するという、非常に明快な理念やロジックに基づいた対応であったとも言えました。
 しかし、ペリー・コモを始め、ビング・クロスビーやジョニー・マティスの名唱で知られ、毎年クリスマス・シーズンになると街中(店舗)やラジオからは必ずと言って良いほど流れてくる名曲が、一部の場所ではあっても消えてしまったというのは、何とも寂しい思いもあります。

 一方、昨年の「ベイビー、イッツ・コールド・アウトサイド」はもっと事情が複雑です。この曲の場合は、歌詞の内容が#Mee Tooムーブメントを中心とした女性の権利運動サイドからの批判を浴びて、アメリカの地方(オハイオ州クリーブランド)ラジオ局が放送禁止を発表し、続いてカナダのラジオ局も同調の動きに出ました。
 同曲は基本的に男女のデュエット曲で、クリスマス・ソングの中でもいわゆる“恋愛ソング”と言われる範疇に入るため、神聖なクリスマスに相応しい曲ではないと昔から批判や論争もあったいわく付きの曲でもあります。
 ですが、これまで実に膨大な数の有名アーティストのコンビによって歌われ続け、ざっと代表的なところを挙げると、ルイ・ジョーダンとエラ・フィッツジェラルド、ボブ・ホープとドリス・デイ、サミー・デイヴィスJrとカーメン・マクレエ、レイ・チャールズとベティ・カーター、ロッド・スチュアートとドリー・パートン、ボビー・コールドウェルとヴァネッサ・ウィリアムス、ジェイムス・テイラーとナタリー・コール、ウィリー・ネルソンとノーラ・ジョーンズ、シーロー・グリーンとクリスティーナ・アギュレラ、ダリアス・ラッカーとシェリル・クロウ等々、実に数多くの、そして意外な組み合わせのバージョンがリリースされてきました。

 ちなみに、この“意外な組み合わせ”の理由としては、歌詞の危なさから、歌う二人の危ない関係を連想させない少々ミスマッチな組み合わせが必要なため、という説もあるくらいですが、実際にこの歌の“危険度”は、ある意味で「イッツ・ビギニング・トゥ・ルック・ア・ロット・ライク・クリスマス」の比ではありません。
 そもそも歌う男女はオオカミとネズミに例えられ、簡単に言えば、デートの後に二人はオオカミの家に立ち寄り、遅くなったので帰らねばと思い迷うネズミを、オオカミがあの手この手で引き留めて口説こうとするという内容の歌であるわけです。
 「外は寒いし」と誘いをかけるオオカミの巧妙な歌詞(セリフ)も女性にとっては眉をひそめるものと言えるでしょうが、ネズミの言い訳も本心がどこにあるのかわからない曖昧な部分もあり、特に#Mee Tooムーヴメント側からは、「男性の家にいるという絶対的に不利な状況下で女性の揺れる心を描くというのは女性の地位をおとしめるもの」、「同意の下でのレイプという言い訳を容認しかねない」など、その批判はかなりエスカレートしました。しかも歌の最後の方では、ネズミが「私の飲み物に何か入れた?」とオオカミに尋ねる部分があり、これはレイプの常套手段であると糾弾されました。

 確かに1940年代半ばに書かれたこの歌詞の内容が、今の時代には全くそぐわないものであることは間違いないと言えます。今や#Mee Tooムーヴメントが多くの男性達を恐怖に陥れている(?)アメリカも、いわゆる女性の権利運動やウーマンリブ運動が盛んになるまでは、女性の地位は極めて低く、音楽の世界、中でも歌詞において女性を単に性的な対象・存在と見なす、男性側からの身勝手で差別的な視点が主流であり容認されてきました。
 それは現代においても根強く残って様々な問題や事件、悲劇を生み出し続けているというのが#Mee Tooムーブメントの主張の根底にあるわけですし、今後このようなケースは音楽、映画、演劇、文学など様々なアート&エンターテイメントの分野で噴出してくることは必死であると言えます。

 ちなみに、この曲に関しては今年のクリスマス・シーズンにジョン・レジェンドがケリー・クラークソンを相手役に迎えて、危ない部分の歌詞を変更する新バージョンを発表して話題になりました。
 つまりこれは、単に送信するメディア・サイドによる規制ではなく、アーティスト・サイド(しかも男女両サイドから)が自主的に規制・調整を行ったケースとして特筆すべき点があると言えます。
 しかしそうした試みも、前述の銃規制の観点から放送禁止とした措置も、トランプ・サポーターを始めとする保守勢力からは、“愚かなリベラル達によるアメリカ文化の破壊行為”と目の敵にされて、ここでも激しい対立の構図を生み出してしまっています。
 何をやっても国が二分されていがみ合うという今のアメリカの図式は、まだまだ当分続いていきそうです。

【After Word】1月

今月のメルマガはいかがだったでしょうか。

今年はオリンピックも開催され、日本が賑わう1年となりそうですね。
オリンピックに合わせて街の様々な部分変わっていき、
少し寂しいような嬉しいような複雑な気持ちです。

弊社も様々な事に挑戦して、日々皆様のニーズにお応えできるよう努力してまいりますので、
本年も何卒よろしくお願い申し上げます。

(鈴木)

【STEP INFO】冬野菜

年の終わり、12月ですね。
1年が本当にあっという間に感じます。

ここ数年の中でも特に暖かい今年の冬ですが、
それでも寒暖差による不調やインフルエンザの流行などで、体調管理に気を付けたいこの頃。


そんな冬に免疫力を高める旬の冬野菜を食べましょう!

冬野菜といえば白菜、小松菜、ほうれん草、など
定番の野菜たちは主に鍋の具材になるような葉菜類が多いですね。
あとは、冬至にいただくかぼちゃだったり、なぜか寒い日に食べると美味しいさつまいも。

これらの野菜を鍋で煮込んで食べるのもいいですが、
僕は旬の野菜たちを好物のカレーに放り込んで食べようと思っています。
いわゆる冬野菜カレーです!

    

かぼちゃとさつまいもの甘みのあるマイルドなカレーや
蓮根、ほうれん草をみじんぎりにしてドライカレーにしてみたり…

さっそく週末に作ってみようと思います。


それではメルマガ12月号スタートです!


(宮道)