I Love NY

【I Love NY】 月刊紐育音楽通信 August 2017

 前回、ニューヨークの公共交通機関の劣悪な状況についてお話しましたが、
先日、改善のための暫定措置として、地下鉄のシートを全て外した
オール・スタンディング車両を試験的に導入するという案がアナウンスされて
話題になりました。ラッシュ時は満員で車両に乗り切れず、
ホームに人が溢れて危険という状況の緩和には少し役立つかもしれませんが、
妊婦や小さな子供を連れた人、老人やハンディキャップの人はどうすれば良いのか、
あまりにも稚拙なアイディアで苦笑・失笑が出る程です。
そもそも“乗れない”原因は、地下鉄全体のシステムが老朽化して
故障やトラブルが続出となっているために地下鉄がきちんと “来ない”ことにあるわけで、
市民はそのアイディアに呆れ顔といったところでしょう。
 前述の理由・批判に加えて、ナチ時代の収容所輸送の列車を思い起こすという
ユダヤ人からの批判もあったのはニューヨークらしいところでもありますが、
満員電車に関してはいつも日本とアメリカの違いを痛感します。何故なら、アメリカでは
日本のような“寿司詰め満員電車”というのは起こり得ず、人と体が触れ合わない、
最悪でも人と体がぴったりとくっつかないレベルでの満員電車ということになります。
よって、僅かな隙間に無理矢理乗り込んで来るような人は極めて少なく、
そういう人がいるとすぐに非難・怒りの目や、時には言葉が向けられます
(無理矢理乗り込んで来る人には日本人と中国人が多いのはちょっと困った点ですが)。
 日本ですと、車掌が乗客を車両内に押し込むという光景もあるようですが、
あれをアメリカでやったら暴行罪(男性の車掌が女性の乗客に対してであれば
性的暴行罪)などの重罪となること間違い無しです(笑)。
普段、お互いに知り合う仲では抱き合ったりキスしたりと体のコンタクトは
極めて頻繁で大らかなお国柄ですが、公共の場で見ず知らずの他人と体が接触することには
極めて神経質(自分の体や持ち物が相手にぶつかった場合はもちろん、触れただけでも
普通はまず謝ります)であるところは、日米の“体の触れあい”に対する意識の違いが
よく表れていて興味深いと言えます。

トピック:音楽界にも拡がる現代アメリカの病巣

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【I Love NY】 月刊紐育音楽通信 July 2017

先日、私の娘が乗っていた地下鉄が故障して真っ暗な地下内で約45分ほど立ち往生となり、
車内は冷房も効かず酸欠状態となって乗客がパニック状態になるという事故がありました。
その後この車両は動き出し、乗客も結果的には全員無事でしたが、
車内にはまともなアナウンスも無く、救援も遅かったことで、
パニック・アタックで一時呼吸困難に陥った娘はその後泣きながら私に連絡してきました。

 そもそもニューヨークは全米一、もしかすると世界でも屈指の公共交通機関が
最悪な都市と言えますが、現在その状況は更に悪化し、
市民の怒りは頂点に達しつつあります。

 そんな事件から約20日後、今度は私がいつも利用する地下鉄のラインで脱線事故が起き、
車内には煙が立ち込めるなどの被害が出て、39人もの人が負傷しました。
私は幸いこの日は別の地下鉄ラインを利用して動いていましたので
事件に遭遇することは避けられましたが、もしも同乗していたら、と思うとゾッとしました。

 一体こんなことがいつまで続くのか。
再開発だの新しい高層ビルだのと観光客や大資本ばかりに目を向けた投資・計画に熱心で、
市民の足や生活、また増え続けるホームレスのことなどにはまともに対応していない
今のニューヨーク市政は正直言って最悪の状況と言えますし、期待されていたデブラジオ市長は今や多くの市民達から能無しの裏切り者呼ばわれされています。

 毎日テロの不安を感じながら、更に公共交通機関もまともに動かず、煩わされ、
脅かされるという状況に、市民のストレスは一層高まるばかりです。

 先日、現状に耐えかねた反トランプ主義者が、
野球の練習をしていた上院議員達を銃で撃ちまくるという恐ろしい事件が
ワシントン郊外で起きましたが、国政においてもトランプ派と反トランプ派両者の
ストレスと対立は高まる一方で、今後更に過激な行動が両サイドから起きてくることも
懸念される今日この頃です。

トピック:21世紀新世代ジャズの到来

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【I Love NY】月刊紐育音楽通信 June 2017

 恐れていたことの一つがまた現実となってしまいました。大きな音楽イベントや
スポーツ・イベントなどの公共施設、つまり大型のコンサート・ホールやスタジアムなどが
今後の大規模なテロの標的となる確率は極めて高い、ということは前々から言われていました。
よって、マジソン・スクエア・ガーデンやラジオ・シティ・ホールなどでは入場に際して
かなり厳しいセキュリティ対応が行われていましたが、カーネギー・ホールなどの
クラシック系や、郊外のホールなどでは正直「この程度のセキュリティで大丈夫なのか」と
言えるような状況でした。
 2015年11月にパリで起きた同時多発テロの中で、イーグルス・オブ・デス・メタルという
ロック・バンドの演奏中にテロが勃発して89人もの犠牲者を出した事件はまだ記憶に
新しいですが、イギリスのマンチェスターにおけるアリアナ・グランデのコンサート
終了直後を狙ったテロは、犠牲者数はパリの時よりも少なく、公演終了後では
あったわけですが、やはりスーパー・アイドル級の大コンサートであったこともあり、
ニューヨークはもちろんこと、世界中の音楽イベンター達にとって戦慄すべき
大事件となりました。
 既にニュース報道でご存知かと思いますが、アリアナ・グランデはとりあえず
6月5日までのツアーをキャンセルとしましたし、イギリス、そしてヨーロッパ公演を
キャンセルするアーティストも
出始めています。更に、出演者よりも戦々恐々としているのはイベント会社や会場などの
イベンター側です。更に、ステージ設営会社やPA会社、マーチャンダイズ産業や
会場内で運営する飲食産業、そしてスポンサーとなる企業に至るまで大きな影響を
及ぼし始めています。
 もちろん、今回の大惨事によって興行産業が衰退するようなことはないと思いますが、
それでもセキュリティ面の見直しを始め、興行の形態やシステムに大きな変化を及ぼすことは
間違い無いでしょうし、なによりも観客側に大きな不安と影を与えることは
必至であると言えます。
 私が常日頃利用しているグランド・セントラル駅構内も次のテロ標的となる可能性の高い
最重要チェック・ポイントの一つとなっているため、ほとんど常にニューヨーク市警の警官と
機関銃を手にした州兵によって監視され、守られていますが、今後は銃を構えた警官や
州兵達に守られてコンサート鑑賞をするなどという事態を思い浮かべるのは
何ともゾッとします。

トピック:ユニバーサルの中国戦略とテンセントのアメリカ戦略

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【I Love NY】月刊紐育音楽通信 May 2017

 4月22日(土)はアース・デイでした。
ワシントンDCに集結して行われたマーチ(行進)を始めとして全米各地では、
我々にとって現在唯一の“宇宙船”である地球に対するケアとエコ・フレンドリーを
キー・ワードに、様々な環境保護、動物保護、食品保護などの団体・組織や個人が
様々なデモやマーチ、イベントを繰り広げ、更に今年は地球温暖化や環境破壊による危機を
訴える科学者達も加わっての大イベントとなりましたが、
予想通り、トランプ大統領と彼の政権は完全に無視・無関心の姿勢を貫いていました。

 そうした中で特に環境保護への関心と意識はアメリカでも
年々急速に高まってはいますが(特に大都市以外の地方自治体の中には、
かなり進歩的なエコ政策を進めているところもあります)
それでもアメリカという国は基本的には、また大多数で言えば、
省エネやエコとは完全に対局にある国であると言えます。
そもそも省エネなどという言葉すらもなく、
電気やガスなどのエネルギーは開発すればするほど、
消費すればするほど雇用や産業も促進されるので大歓迎という発想と言えます。
常に省エネを推進している日本の人達には申し訳ないですが、
アメリカ人にはそもそも“もったいない”といった発想はなく、
節約に対する意識や美徳などもなく、
むしろ開発・消費することにこそ美徳があるとでも言わんばかりです。

 よって、ある意味でトランプと現政権は、
そうしたアメリカの一般的な大多数を代表しているとも言えますし、
その自然破壊も厭わないエネルギー開発や反環境保護政策に関しては
実はかなりの支持を集めていると言っても過言では無いでしょう。
アメリカは人種、宗教、女性、LGBTQといった人権問題には
極めて敏感で意識も高いですが(つまり人権はアメリカの憲法の根幹を成すため)
環境問題に関しては、発展途上国よりも意識は低いと言わざるを得ません。
また、環境政策に関しては利権と支持が一層ストレートに絡むため、
連邦や州、地方自治体を問わずリーダー達には期待できず、
アース・デイのような草の根運動こそが重要であると感じます。
長い時間はかかるでしょうし、アメリカ人やアメリカ政府が本当に環境の大切さに
気付くまで地球が保つのかはわかりませんが、
この後の世界を担う子供達のために課せられた我々の責任・使命は大きいと言えます。

トピック:2017年「レコード店の日」に見るアナログ盤ブームの現状と今後

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【I Love NY】月刊紐育音楽通信 April 2017

 最近はどこにいても“どうでもいい話”や“たわいもない話”をする機会が
めっきり少なくなりました。それほど世の中では憂慮すべき様々な事柄が
進行していて、ニューヨークに限らずアメリカは日々そうした不安や危惧に
振り回されている感があります。
 個人的には、日曜日の礼拝におけるゴスペルのクワイアと演奏が
世間の雑音・騒音を忘れられる一時であるとも言えるのですが、それでも
牧師によってはストレートに政権に対するプロテストを語る人もいますし、
礼拝後は誰からともなくトランプ批判が繰り出され、礼拝後の和やかな語らいは
怒りに満ちた批判に様変わりしがちですし、様々なプロテストの拠点とも言える
ニューヨークの中でも、特にハーレムの黒人達の先行きに対する不安と政権への
怒りはかなりのレベルに来ていると感じます。そうした中、数日前のロンドンの
テロの余波を受けて、ニューヨークの交通機関やイギリス・国連関連などの
重要拠点は更に物々しい警戒態勢に入っています。
 そもそも都会の生活とは疲れるものではありますが、テロは神経をすり減らし、
プロテストは穏やかさが失われていく要因にもなってきます
(とは言え、プロテストは継続させなければなりませんが)。
時折日本に帰る方が安全かなと思うこともありますが、トランプ政権の下では、
日本と韓国はこの先何らかの大きな犠牲を払うであろうという認識が
アメリカでは一般化してきている中で、どこが安全という話ではないようにも思います。
 そうした中、やはり音楽というのはいつも人の心を和らげ、持ち上げ、慰め、
奮い立たせてくれます。
私自身はその時々の気分や心理状況に応じて、ゴスペル、カントリー、ジャズ、
ロック、ポップス、クラシックなど様々な音楽を“処方”していますが、
私の周りでも、例えばダンス系ばかり聴いていたような人が、何かもっと心に響く
音楽を求めて幅広い音楽に耳を傾け始めているように思います。
それは受け手だけでなく作り手に関しても同様で、時代は正に新たな音楽文化の
胎動期に入ってきているように感じます。

トピック:SXSWという巨大エンタメ&IT系カルチャー・イベント

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【I Love NY】月刊紐育音楽通信 March 2017

 個人的にはほとんど興味が無くなっているグラミー賞ではありますが、
賞の行方もさることながら、この授賞式のイベント自体が依然現在の音楽業界の動向や
方向性を示す一つのショーケースとなっていることは間違いありません。
 よって、ノミネートや受賞者のみならず、今年は誰が司会を務めるのか、
誰が、または誰と誰が共演パフォーマンスを行うのか、
誰がその過去の功績を表彰されたり追悼されたりするのか、
などといった点も興味深い点であると言えます。
 今回の授賞式後の報道では、
「今年は“政治”と“追悼”が一層前面に押し出された授賞式であった」
という論調が目立ちました。
なにしろ、私達はこの恐るべきトランプ時代を迎えたわけですから、
そのことは充分に予想されましたし、そもそもグラミーもアカデミーも、
“表向きは反体制”であると言えます。

 今回のグラミー賞授賞式での様々な発言は、
“音楽文化とその基盤となるフリーダムは決して国家権力には屈しない”という
力強さと逞しさが溢れていましたが、抗議・抵抗はもちろん必要なのですが、
その先のビジョンが見えてきませんし、
どこを向いても分裂・対立・抗争は一層激化するばかりです。
 なにしろ嘘を「代替的事実」などと称し、
目的遂行のためには侮辱・脅迫も厭わないエゴイスティックな政権ですので、
音楽業界、特にアーティスト達のプロテストは今後も一層激化していくことでしょう。
 いまや反トランプ・ムーヴメントを代表する娯楽TV番組と言える
「サタデイ・ナイト・ライヴ」の爆笑寸劇は、私も毎週楽しみにはしていますが、
それにしても権力サイドも反権力サイドも“更に過激に”“更に低レベルに”と
エスカレートしていく状況には、一層の不安と危機感も募らせてしまう今日頃と言えます。

トピック:2017年の音業界において最もパワーを持つ人物は?

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【I Love NY】月刊紐育音楽通信 February 2017

トピック:トランプと音楽界/音楽業界の2017年

 「これは悪夢に違いない」、「2017年が来てほしくない」。
どれだけ多くのニューヨーカー達がそう思ったことでしょう。
しかし、悪夢は現実となり2017年はやってきました。
前代未聞の言いたい放題・やりたい放題の大統領が誕生し、
アメリカは分裂と衝突の時代に入っていくことは間違いないでしょう。

 その証拠に、デモやプロテストは拡大・激化していく一方ですし、
ブルース・スプリングスティーンやマドンナ、 レディ・ガガやケイティ・ペリーなどを
筆頭に音楽界、特にスター達の行動は予想以上に過激になってきています。

 まだ音楽という手段での抗議は目立ってはいませんが、それほどミュージシャン、
アーティスト達も怒り心頭で危機感も頂点に達して切羽詰まってきており、
音楽表現などよりもストレートな行動に出ていると言えます。

 ですが、この2017年は音楽界も一層活発になっていく気配がします。
政治や社会が混乱し、不満や対立が激化していくと、音楽を始めとする文化は
パワーを増して、新たなムーヴメントをも生み出していくのは、
これまでのアメリカの歴史が証明しているからです。

 そこで今回は、トランプ批判ということではなく、トランプと音楽界/音楽業界、
そしてトランプ大統領&政権が音楽界/音楽業界に及ぼす影響について、
いくつか見ていこうと思います。

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【I Love NY】月刊紐育音楽通信 January 2017

 サンクス・ギヴィングからクリスマスにかけてのホリデイ・シーズンに久々に
映画館で映画を2本見ました。
1本はディズニーの新作「モアナと伝説の海」で、
もう1本は遠藤周作原作・マーティン・スコセッシ監督の「沈黙」です。
 前者は、ディズニーとしては「ムーラン」以来の”戦う女の子”(声の主役はハワイ出身の15歳の女の子が大抜擢)を主人公に自然回帰をテーマとした意欲的な作品で、
音楽は今最も話題のミュージカル「ハミルトン」の主演/脚本/作曲により
“時の人”となっているリン-マニュエル・ミランダであることも話題です。
 また、映像は実写感またはヴァーチャル感を強く押し出した新機軸の
CGであることも注目されます。
 巷では半神半人のもう一人の主人公マウイを始め、
劇中に登場するポリネシア系の人々の容姿が肥満過ぎるという批判もあり、
その批判は全く正しいと思いますが、
そのテーマ性はこれまでの西洋的なストーリーからは脱却した母なる自然(=海)への回帰と敬意を促すものとして大いに注目されると思いますし、
ヴィーガンである私としてはモアナのペットが、
特にポリネシアでは主食ともいえる豚とニワトリであったことが、
特に子供達にとって一つの意識変革をもたらすファクターにもなっていることに
嬉しくなりました。
 一方、後者の「沈黙」は私の敬愛する遠藤周作氏の代表作であり、
それを何とスコセッシが手掛けたという、ハリウッドにおいては革命的な作品と言えます。
もちろん緊張感に満ち満ちた重苦しい作品ではありますが、
同時に信仰の力と希望に満ち溢れた力強い作品でもあります。
 個人的な話で恐縮ですが、私は母方が先祖代々クリスチャンで、
かつては隠れキリシタンであったため、先祖の一部は拷問・処刑されたと聞いています。
よって、「沈黙」のストーリーは私の祖先の歴史の一部とも重なっているわけで、
私はこの映画を終始涙無しに観続けることができませんでした。
 今の日本の人達にとって、この小説・映画がどのくらいの説得力を
持つのかはわかりませんし、アメリカでも若い世代にはむしろ敬遠されるかもしれません。
実際に、今回ニューヨークでもロードショーは2館のみで、
観客は圧倒的に中高年層でした。
ですが、遠藤周作氏が伝えたかったこと、スコセッシが伝えたかったことは、あまりに力強く、永遠であると私は信じています。
 

トピック:「2016年 アメリカ音楽業界の総括レビュー」

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【I Love NY】月刊紐育音楽通信 December 2016

 「ブリグジット(Brexit)」に続き、またしても自分の予想や期待は外れてしまいました。
もちろんこれは私だけではありません。ほとんどのニューヨーカーは、今回の大統領選の結果に
唖然・呆然とし、消沈・悲嘆し、この先の4年間を憂慮していることは間違いありません。
ニューヨーカーに最も嫌われるニューヨーク出身の大統領、というのも何ともおかしな
図式ですが、何しろマンハッタンとブロンクスにおいてはトランプの得票率は10%にも
満たなかったのですから、ニューヨークが他のアメリカ諸州といかに異なるかが
わかっていただけると思いますし、ロバート・デニーロが「これは911テロに続くショックだ」
と嘆いたのも頷けます。
 あの悪夢の11月8日以降、ニューヨーク、特にマンハッタンではかつてないプロテストが
巻き起こりました。私は12日と13日の土日はCM撮影の仕事でマンハッタン内を車で
動いていましたが、長年ニューヨークに住んでいて、あれほどの規模のプロテスターによる
デモに出会うのは初めてでした。思えば911テロ後のアフガニスタン侵攻、
そしてイラク戦争の時も大規模なデモが行われましたが、今回の場合は地元・身内での
出来事ですから、プロテスター達の思い・パワーは半端ではありませんでした(私も車の
クラクションでデモに“参加”しました)。
 とは言え、どんなに抗議を行っても、大統領というのはアメリカ合州国の最高指令官
であり、大統領を信頼し、敬意を表し、サポートするのがアメリカ国民の務めでもあります。
理解と葛藤の狭間で、ニューヨーカーにとってはあまりに大きな試練が課せられることに
なったと言えるでしょう。時代は逆行・混乱するかもしれませんが、向かうべきゴールは
揺るぐことはありません。そう信じて、この先の4年間を注視しつつ、自分達の進むべき道を
進んでいきたいと思う今日この頃です。
 

トピック:来るべきスマート・スピーカーの時代

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【I Love NY】月刊紐育音楽通信 November 2016

先日、ある友人の紹介で、日本の不動産業の人を今ニューヨークで最も旬な不動産エリアに
案内することになりました。
もちろん私は不動産業に関しては専門外ですがニューヨークに長年暮らす者として、
不動産物件の動きには敏感で常にニュースは得ているのでお受けすることにしました。

 私が案内したのは、マンハッタンではミッドタウンにおける新興の最注目エリアである
ハドソン・ヤード、驚くべき復興によって今やミッドタウンを凌いでマンハッタンの中心に
復活しつつあるダウンタウンの新WTCサイト周辺エリア、そしてブルックリンのダンボ地区とウィリアムズバーグ地区、クイーンズのロング・アイランド・シティの高層建築エリア。
これらを2日間駆け足で回りましたが、上記のエリアに共通する点は、
どれも中流クラスの所得者には全く手が届かない豪華な物件ばかりであるということです。

現在、ミッドタウンの東側にはエンパイア・ステート・ビルを超える高さの新しい駅ビルが建設予定で、更に周辺では100階近いビルの建設が15棟ほど計画されているとのことで、
ニューヨーク市内各所で進められている大掛かりな再開発に投じられる莫大な資本・建設費には驚くばかりです。

 そうした折、ある新聞の記事にマンハッタンの土地を牛耳る
12人の億万長者達の紹介がありました(ビル・ゲイツや、ブルー ムバーグ前ニューヨーク市長、大統領選を含めてアメリカを動かしていると言われるコーク兄弟などが名を連ねています。)興味深いのは、彼等のほとんどが“慈善事業家”としても活動し、
世に知られているということですが、これほどの億万長者の“慈善事業家”達がいても、
格差は益々広がり、ニューヨークのホームレス人口増加には歯止めがかかりません。
聖書にも「持てる者はますます富み、持たざる者は更に失なう」とあります。
さて、ではそれを改善する方 法や如何に?

トピック:ハード・ロック・カフェが世界にもたらしたもの

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【I Love NY】月刊紐育音楽通信 October 2016

 先日のニューヨークはマンハッタンのチェルシー地区での爆発事件はアメリカよりも
日本の方が過剰に報道されたようです。もちろん現場に居合わせた人達は恐怖におののき、
怪我をされた人達は辛い思いをされているのに、こんな言い方は
大変申し訳なくはありますが、ほとんどのニューヨーカーの反応は至って冷静であった
と言えます(大騒ぎしているトランプというニューヨーカーもいますが)。
 これも不遜な言い方かもしれませんが、先日のような規模のテロ的犯罪はある程度想定内
であったとも言えますし、ニューヨーカーであるならば、 誰もがある程度は覚悟している
こととも言えるかと思います。何しろ我々ニューヨーカーは日々武装した警官や兵士達に
守られて生活しているわけです。大げさに言えば、いつテロに遭って死んでもおかしくない
という状況の中で生活し、ある程度の覚悟は持っている(または持たざるを得ない)わけで、
それが故に逆に警備が厳重で警官や兵士が周りにいた方が安心したりもするという
おかしな感覚もあります。
 さらに、911のテロを経験している我々は、ちょっとやそっとのテロ行為などには
屈しないというかへこたれない強さも持っていると思いますし、大騒ぎすることは
自信の無さや弱さの 表れであるという感覚もあるように思います。
 
 それが証拠に、先日の爆発事件の後の対応・対処・復旧の早さは実に見事であったと
言えますし、それが益々我々ニューヨーカーの自信や強さにつながっているようにも感じます。
 今はテロの話題よりも、ニューヨーク特にマンハッタン内で言えば国連総会であり、
アメリカ全土的に言えば何と言っても大統領選であると言えます。私達にとっては
目先の事件よりも、この先の指針・方向性・行き先こそが重要であり、逆に言えば
それほど現在の状況は経済的にも文化的にも、そして人種的にも階層的にも格差や
対立・分裂が極めて深刻化していると言わざるを得ません。
 
 大した変革は期待できずにもうしばらく耐え忍ぶか、無謀・無策なショック療法で
自滅するか。ヒラリーとトランプに関してはこんな悲観的な評価・ 対比によって
語られもしますが、我々はリーダー任せで変革を期待するだけではなく、
自分達自身も変革していかなければならない瀬戸際に立たされていると強く感じます。

トピック:コバルト・ミュージックの野望と音楽業界の変革

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月刊紐育音楽通信 September 2016

 連日様々なドラマを繰り広げているオリンピックですが、一般的にアメリカ人はオリンピックには興味が無いなどとも言われますが、正確にはアメリカ人は”アメリカ人の出場しないオリンピックには興味が無い“のであって、自国選手のオリンピックでの活躍には日々盛り上がっていると言えます。
 水泳、陸上、体操などオリンピック開始前から話題であった種目はもちろんですが、そうした中で非常に印象的で話題となったのが、ヒジャブを着用した“アメリカ最初のオリンピック代表”のフェンシング選手でした。実は彼女はオリンピック前からテレビのトーク・ショーに出演したり、オバマ大統領からも激励されたりで、話題になっていた人でもありました。
結果は銅メダルではありましたが、試合後のインタビューがこれまた非常に立派で、話も明快・明晰で、最近益々偏見が強まるイスラム教徒への理解に大きな役割を果たしたことは多くのメディアも認めています。
 偏見に悩み苦しむ同胞達への彼女からの励ましの言葉は中々感動的でしたが、実は以前のテレビ・ショー出演では、彼女の“超アメリカ的”な愛すべきキャラクターも一部では非常に受けていました。
彼女はイスラム教徒の アメリカ人であると共に、アメリカという国を愛する紛れもないアメリカ人であり、彼女の存在は、人種・宗教・性別に対する偏見を許さないアメリカという国の基本理念の証であるとも言えます。

トピック:音楽コンサートにおけるシティバンクとアメリカン・エクスプレスの闘い

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【I Love NY】月刊紐育音楽通信 August 2016

 先日、ダラスで予定されていた仕事がキャンセルとなってしまいました。
理由は同地で警官5人が撃ち殺された事件です。仕事がキャンセルとなるのは
大変困った事態ですが、それ以上に困った事態なのは、黒人対警察という対立図式です。
どちらのサイドも事件が起こる度に態度を硬化させる結果となってしまい、
解決どころか対話の糸口すらもいまだ掴めずという状況です。
 
 私自身も、以前白人警官からひどい扱いを受けたことが何度かあります。
白人警官達の中には、法を執行するという立場を越えて、明らかに人種的偏見を持った人間達がいることは明らかですし、アフリカ系の人達が受ける屈辱の度合いは黄色いアジア人の
私の比ではありません。しかし、それは一部の話であって、全ての話ではありません。
悪い黒人もいれば、悪い警官もいる。そんなことは誰でもわかっているはずなのに、
事態はエスカレートする一方で、人種間に潜む疑いと恐怖と敵意は益々助長されていると
言えます。
 
 そうした中、先日マイケル・ジョーダンが黒人対警察の問題に立ち上がりました。
ジョーダンはこれまで政治的な発言や行動はほとんどと言ってよいほど避けてきた人ですので、この人が動いたのは驚きであると共に、事態の深刻さも強く感じます。
 今回、ジョーダンは警察と黒人協会の両サイドに対して多額の寄付をするとのことです。
億万長者のスーパースターであれば寄付は当然とも言えますが、それは金によって解決しよう
ということではなく、金によってそれぞれの組織体制を改善し、お互いの理解を深めるため、
対話を実現させるための“教育的投資”であるとのことです。
 差別・偏見の根っこは“無知”であるとよく言われます。“無知”は敵意と恐怖を生み出します。
実際に、この“無知”によって敵意と恐怖を抱いている人達のいかに多いことか。
そして、この“無知”によって敵意と恐怖を煽り、アメリカの基本理念や憲法の意義までも
崩壊させてしまう大統領候補まで登場してしまうのが、残念ながら今のアメリカの一つの
姿であると言えます。
 ジョーダンの決意と取り組みが、少しでも現状を打開する手助けとなることを
祈るばかりです。 

トピック:“モンスター”プロモーター企業、Live Nation

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【I Love NY】月刊紐育音楽通信 July 2016

今年も7月4日の独立記念日がやってきました。
独立記念日と言えば、BBQと花火というのが大多数を占める一般的なアメリカ人の連想回路であり、“アメリカの誕生日”としてアメリカの祝日の中では最もお祭り的な盛り上がりを見せるとも言えます。
 しかし、まだまだ少数派ではありますが、この独立記念日こそ、アメリカという国の成り立ち、そしてアメリカという国の基盤となる憲法について考えようという動きも活発になってきています。
 先日のオーランドのゲイ・クラブでの虐殺の衝撃と反動は、今もアメリカ全土を揺るがしていると言えます。
亡くなった人達(ほとんどが20歳代の若者達です…)には本当に申し訳なく気の毒ですが、先日の事件によって、連邦的には認知されているとは言え、州レベルではまだまだ差別の続くLGBTQムーブメントを大きく前進させる起爆剤となったことは間違いありません。
しかし、その一方で銃規制に関しては何も変わらず、何も動かずです。
アメリカ人以外の人達はよく、「何故アメリカは痛ましい銃乱射事件を繰り返しても銃規制ができないのか」と言いますが、それは簡単です。
銃の所持は憲法(修正第二条)で保障されているので、銃規制は憲法違反であり、建国の父達に背く行為、と解釈されるわけです。アメリカはそうやって銃と共に生まれ育ってきた国なわけです。
 しかし、闇雲な護憲ではなく、憲法がいつ生み出され(1789年提案、1791年実施)、当時がどういう状況であったかについて、しっかりとした理解を持つことは益々必要になってきていると言えます。
何故我々は銃を持ち続けるのか。
何故我々には銃が必要なのか。
建国の父達の時代・状況・背景を理解することは、今の時代を理解することでもあります。
アメリカの銃規制はそうした根本的なレベルでの問いかけ無くしては決して成し得ないでしょう。

トピック:イギリスEU離脱の衝撃と音楽界への影響について

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【I Love NY】月刊紐育音楽通信 June 2016

 ニューヨークは短い春が終わって、いきなり夏日となってきました。
既に人生の半分以上がアメリカ(ニューヨーク)生活となっている私自身は、
例えば日本食が恋しくなるというようなことは無いのですが、
日本の四季、特に春と秋はいつも懐かしく、本当に素晴らしいと感じます。

 一年の大半をTシャツと短パンで過ごせるようなアメリカの他の地域と違って、
ニューヨークには四季もありますが、それでも長い冬が終わって春を告げたかと思うと、
あっという間に夏がやってきて、暑い夏が終わって涼しい秋になったかと思うと、
あっという間に寒い冬がやってきてしまうのは、何とも寂しい思いがあります。
よって、服も春・秋物の服というのはあまり着る機会が無く、
バリエーションが少なくなってくるのもちょっとつまらないと言えます。

 日本は春・秋物の服が充実していると思いますし、昔はツアーなどで
春・秋に日本に行くと、素敵な服がいろいろとあるのでよく買って帰ったものですが、
もう今や春・秋物で気に入った服を見つけても、
「これはニューヨークでは着る機会が少ないな〜」と断念してしまうのが
ちょっと残念です…。

トピック:米音楽界が失った偉大なる個性達(この1年間の物故者を振り返る)

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【I Love NY】月刊紐育音楽通信 May 2016

プリンス急遽のニュースに打ちのめされ、未だに信じられない状態ですが、その謎を呼ぶ不可解な死は、“鎮痛剤依存症専門医”の登場で、薬物がらみである可能性が高まってきました。
その専門医はプリンスの死の翌日にプリンス邸に飛行機で飛んで治療を行う予定であったとのことですが、死の当日のプリンス邸に向かったのはまだ医学生である専門医の息子で、しかも邸宅内のエレベーターで倒れていたプリンスを発見して救急車を呼んだのもこの息子であったということで、事件は更に様々な憶測を呼んでいると言えます。
更に、シネイド・オコナーが、プリンスの死の直前までプリンスにドラッグを与えていたのはアーセニオ・ホールだと告発し、それを受けてアーセニオがシネイドを告訴するという始末。
プリンスの死の波紋は、何ともグロテスクで醜い展開をも生み出しています。
いずれにせよ、マイケル・ジャクソンもプリンスも、その死の影にはドラッグと“専門医”がいるというのは、いたたまれないと共に、不気味さも感じてしまいます。
マイケル・ジャクソン享年50歳、プリンス享年57歳、共に1958年生まれ。
合掌。

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【I Love NY】月刊紐育音楽通信 April 2016

 ここ最近、雑誌やテレビなど日本のメディアでは“ニューヨークの最新人気エリアはブルックリン”
というような言われ方をしていると聞きます。ブルックリンに関しては、私自身もこれまで何度か
取り上げてきましたし、昨年は「ブルックリン」という映画もヒットするなど全米的に注目を
集めてきていますので、それはある意味では正しいのですが、実際には様々な要素や現状があって、
一言で言い切ってしまうには危険があります。
 
 まず、一般的にブルックリンが注目されているというのは、ウィリアムズバーグやダンボ、ボコカ
(ボアダム・ヒル、コブル・ヒル、キャロル・ガーデンズという3つのエリアを組み合わせた略語)
などといったごく限られたエリアのみであって、その他ダウンタウン周辺やブッシュウィックなどの
エリアで注目されているのは、その中の一部のエリアであって全体では無く、
まだまだ治安の悪い“ゲットー・エリア”は多く存在します。
 最近は、ブルックリンで最も治安の悪いエリアの一つであったベッドフォード・スタイヴサント
(通称、ベッドスタイ)なども大きく変わってきており、昨年までは私の娘も住んでいましたが、
これを最先端の動きを追おうと“流行”のように捉えるのは大変危険です。
(その大きな責任の一端は、ニューヨークの“最新”を無責任に発信し続けているメディアと、
現場の情報提供を行うライター、ブロガーといった連中であると私は感じています。)
 
 現在ニューヨーク市では、アフォーダブル・ハウス(アパート)と呼ばれる新しい形の
ハウジング・プロジェクトの開発が急ピッチで進められていますが、その中には、これまで治安が悪くて
敬遠されていたエリアも数多くあります。ニューヨーク市とデベロッパーとしては、こうしたプロジェクトを
進めることによって、これまで治安の悪かった場所を再開発していきたい(不動産・物価を高騰させたい)
狙いがあるのですが、その過程においては様々なリスクがつきまといます。
 
 昔、ウォー(War)というバンドの「世界はゲットーだ」というヒット曲がありましたが、
アメリカという国は恐ろしいほどの貧富の差が存在するため、
どこの都市・町にもゲットーが少なからず存在します。そのため、特に都市部では
貧富が背中合わせで共生し、常に犯罪が潜在化しているとも言えます。
  また、アメリカ人と日本人は歴史的な背景や住環境が全く異なりますので、治安の善し悪しに対する
感覚にも大きな開きがありますし、更にアメリカ人の中でも所得や環境の違いによって
認識に差が生じてきます。
 
 最近私の周りで、日本から仕事や休暇で来られた方でインターネットで見つけた安いホテルや
アパート(しかも「最近注目のブルックリンの人気エリアで治安も良い」などと紹介されている)などに
滞在されたものの、不安を感じられたりトラブルに遭遇されたりする機会を何度か立て続けに
見聞きしてきました。一歩間違えれば命にも関わるそうした問題を避けるためにも、
この国は人気と流行だけでは絶対に語れないということを多くの人たちにわかっていただきたいと
望むばかりです。

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【I Love NY】月刊紐育音楽通信 March 2016

ステレオタイプや固定観念、または十把一絡げという発想は最も避けるべきことの一つである、ということはわかっていますが、やはりそうは言っても人間はマイナス面・ネガティヴ面で人や物事を判断してしまいがちです。
度重なる不祥事と不幸な事件によって、ニューヨーカーだけでなく、全米の主に有色人種にとって警官・警察のイメージは相当地に落ちてきていることは否めません。
  そんな重苦しい状況の中で、先日ちょっと心温まるストーリーがありました。
ニューヨーク市クイーンズの屠殺場から、一匹の子羊が逃げ出し、ストリートを走り回ってちょっとした騒動になりました。
結局この子羊はニューヨーク市警の警官に捕らえられ、屠殺場に送り返される予定だったのですが、こんな生まれて間もない可愛い子羊をすぐに殺してしまうのは忍ばれる、と仲間の警官達と3人と割り勘で、この子羊を屠殺場から買い取り、ニューヨーク州の北部にあるアニマル・サンクチュアリーという、主に屠殺場から救い出された家畜の愛護施設に送られることになりました。
  買い取り金額は45ドルということで、一人15ドルずつというわずかな額ではありますが、
引き取った子羊と一緒ににこやかな笑顔で写真に収まった警官達の行いが、日頃何かとギスギスした人間関係に陥りやすいニューヨーカーの心を少し温めてくれたことは間違いありません。

トピック1:今年のスーパーボウル・ハーフタイム・ショーの波紋

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【I Love NY】月刊紐育音楽通信 February 2016

 いやはや、記録的な暖冬の後に、記録的な大雪がやってくるとは思ってもいませんでした。
ニュースなどでもご存じかもしれませんが、昨年一 杯続いたアメリカ北東部の暖冬は本当に異常なものと言えました。ニューヨークでは10月 末のハロウィーン辺りから冬の兆しが
見え始め、11月末のサンクス・ギヴィングはすっかり冬の雰囲気、そしてクリスマス前後は
ホワイト・クリスマス(までいかなくても雪がちらつく)になる、
というのが例年のパターンで した。
しかし、昨年はハロウィーンのトリック・オア・トリートも子供達や若者達にはTシャツ姿が
多く見られ、サンクス・ギヴィングは外でBBQをする人も多く、クリスマスが近づいても
日によってはジャケットやコート不要という日が続きました。
 
 今は地球温暖化が危惧されている状況ですから、この異常な暖冬もニューヨークでは
よく話題になりました。「これは正に地球温暖化の証拠」、
「いや、これは単にエルニーニョ現象によるものであって地球温暖化とは無関係」、
「いや、最近のエルニーニョ現象こそ地球温暖化によってもたらされているもの」
といった論争がニュース・メディアを中心に起こり、注目されました。
 
 アメリカでは、今も地球温暖化自体に対する意見・認識が大きく分かれています。
あれほどオバマ大統領が声高に地球温暖化の危機を訴え、 ローマ法王も来訪して
そのことを訴えて行きましが、地球温暖化などというのは無くの虚偽であるとか、
化石燃料産業バッシングの口実であるとか、原子力産業の陰謀である、と言う人達は
かなり多く、オゾン層は戻ってきている、極の氷も増えてきている、といった話も
良く聞かれます(例えば、ほとんどの共和党員は地球温暖化を認めていないようです)。
それは、綿密な調査・分析によって地球温暖化の嘘を指摘する科学者達の反論から、
化石燃料産業やその産業をサポートし たり深く関わる人 達の感情的な反論まで、
様々な主張があるため、真偽の程を見分けるのが非常に難しくなってきているとも言えます。

  そうした状況の中で、先日の大雪は地球温暖化否認派が勢いづくことにも
繋がっているようです。「地球も人間と同じで生きているんだから、
冬だって寒くなる時もあれば温かくなるときもある。それを地球温暖化に全て結論づけるのは
おかしい」確かにそうかもしれません…。「いや、暖冬だけじゃない。洪水や竜巻など、
ここ最近のアメリカ全土の異常気象はあまりに多い。大雪で冬が戻ってきたからと言って
地球温暖化を否定するのはおかしい」確かにそれもその通りで す…。

さて、皆さんはどう思われますか?

トピック:ミュージカル界の新たなアプローチと音楽界との関わり

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【I Love NY】月刊紐育音楽通信 January 2016

 昨年末にアコギを手に入れました。私の中学時代のヒーローの一人でありながら、もう再び出会うことはないだろうと思っていたジョン・デンバーの音楽に再会し、当時彼が愛用していたギルドのアコースティック・ギターがどうしても欲しくなりました。
50年代設立のギルドはマーチンやギブソンほどの歴史も人気もありませんが、当初は工場閉鎖になったエピフォンの職人達を雇い入れ、その名の通り徹底した職人気質を貫いていました。
有名どころではポール・サイモンやリッチー・ヘイヴンスなどが愛用していましたし、ジャンボ・サイズのF-50は、ジョン・デンバーのトレード・マークにもなっていました。

私にとってF-50は憧れのジョン・デンバーが使用していた憧れのギターでしたが、私の体にはジャンボ・サイズは大きすぎるので、今回手に入れたのはF-50よりも小ぶりなセミ・ジャンボとも言える廉価版的なF-47。
細かい傷も多く、数カ所クラック・リペアもされてはいますが、私がジョン・デンバーにはまっていた1974年製造のビンテージです。

アメリカの誇るアコギと言えばマーチンとギブソンが頂点ですが、ギルドのギターは実にソリッドでありながらも独特の柔らかさと伸びやかなサウンドを持ち、マーチンやギブソンとは明らかに異なる個性を持っていました。
ギルドはその後フェンダーに買収され、その後他のメーカー同様に中国製の低価格モデルも作り始めましたが、最近は全てアメリカ製の復刻モデルも作り続けています。
しかし、素材(特にマホガニー)はもちろん、当時の職人気質とこだわり、そしてそれらを許容・維持し続けることが可能であったプロダクションは現代とは違います。
このギターがこの世に生まれて40年以上。
私がこのギターに憧れて40年以上。今回の出会いまでには長い年月がかかりましたが、これも音楽の喜びの一つであると感じます。

トピック:ストリーミングは音楽業界を制覇したのか?

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